理化学研究所,科学技術振興機構(JST),東京大学

令和6年5月21日

理化学研究所
科学技術振興機構(JST)
東京大学

スキルミオンひもとその融解過程の観察

~高精度電子線位相差トモグラフィー技法の確立~

理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 電子状態マイクロスコピー研究チームの于 秀珍 チームリーダー、強相関理論研究グループの永長 直人 グループディレクター、創発物性科学研究センターの田口 康二郎 副センター長、強相関物性研究グループの十倉 好紀 グループディレクター(東京大学 卓越教授/東京大学 国際高等研究所 東京カレッジ)らの共同研究グループは、高精度電子線位相差トモグラフィー技法を開発し、ナノメートルスケールのスキルミオンひもの直接観察と、その詳細な融解過程の記録に成功しました。

本研究成果により、3次元トポロジカル磁気構造の知見を得ることができ、新たなトポロジカル磁性科学の開拓に貢献すると期待できます。

今回、共同研究グループは、3次元磁化イメージングの空間分解能(位置的に接近した2点を、離れた2点として見分ける能力。見分けられる2点間距離が小さいほど空間分解能が高い)と測定時間を改善するため、新たに3次元電子線位相差顕微法(3D-DPC)の開発に成功し、従来の3次元磁化イメージングの空間分解能(約10ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル))を大幅に向上させるとともに測定時間(数時間、または数日)を10分の1以下に短縮させ、空間分解能は5ナノメートル以下、測定時間は10分以下を達成しました。この顕微観察技法を用いて、直径80ナノメートル、長さ260ナノメートルのスキルミオンひもを直接観察し、その熱による融解過程を記録することができました。この結果から、スキルミオンひも中に現れた磁気ヘッジホッグ-アンチヘッジホッグテクスチャーの熱揺らぎが融解の初期過程で起こっていることが明らかになりました。

本研究は、科学雑誌「Communications Materials」オンライン版(2024年5月21日付)に掲載されます。

本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究(A)「電子顕微鏡によるトポロジカルスピン構造とそのダイナミクスの実空間観察(研究代表者:于 秀珍、19H00660)」、同 基盤研究(S)「磁性伝導体における新しい創発電磁誘導(研究代表者:十倉 好紀、23H05431)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST 「Beyond Skyrmionを目指す新しいトポロジカル磁性科学の創出(研究代表者:于 秀珍、JPMJCR20T1)」による助成を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“3D skyrmion strings and their melting dynamics revealed via scalar-field electron tomography”
DOI:10.1038/s43246-024-00512-5

<お問い合わせ先>

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