京都大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年5月13日

京都大学
科学技術振興機構(JST)

人工超格子によるらせん型超伝導状態の創出とその検出に成功

~有限運動量の電子対を持つ超伝導~

京都大学 大学院理学研究科の浅場 智也 特定准教授、成塚 政裕 同 博士課程学生(2020年3月卒業)、淺枝 寛人 同 修士課程学生(2023年3月卒業)、小菅 優揮 同 修士課程学生(2024年3月卒業)、池森 駿 同 修士課程学生、末次 祥大 同 助教、笠原 裕一 同 准教授(現 九州大学 教授)、幸坂 祐生 同 教授、寺嶋 孝仁 同 教授、大同 暁人 同 助教、柳瀬 陽一 同 教授、松田 祐司 同 教授の研究グループは、3種類の希土類化合物を積層構造させた3色人工超格子においてらせん型超伝導状態が実現している証拠を発見しました。

超伝導は電子が対を組むことによって生じますが、通常の超伝導体では電子対の重心運動量はゼロとなっています。これに対し、らせん型超伝導は電子対が有限運動量を持つ特殊な状態です。しかし、その直接的な証拠はこれまで見つかっていませんでした。本研究グループは、らせん型超伝導状態を実現・観測するために、希土類化合物を原子数層ずつ積層させた人工超格子構造を作製し、非相反伝導と呼ばれる現象を調べました。その結果、低温・高磁場領域において、超伝導電子対が有限の運動量を持った状態が起こっている直接的な証拠を発見しました。本研究は、これまで自然界に存在することが知られていなかった新しい超伝導状態を人工的に作り出し、さらにその検出にも成功したという大きな意義を持つことから、今後の新しい超伝導状態の発見につながるものです。

本研究成果は、2024年5月8日(日本時間)に英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

本研究は、JST さきがけ(課題番号:JPMJPR2252)、CREST(課題番号:JPMJCR19T5)、JSPS 科学研究費補助金(18H05227、18H03680、18H01180、21K13881)、新学術領域研究「量子液晶」の支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Evidence for a finite-momentum Cooper pair in tricolor d-wave superconducting superlattices”
DOI:10.1038/s41467-024-47875-4

<お問い合わせ先>

(英文)“Evidence for a finite-momentum Cooper pair in tricolor d-wave superconducting superlattices”

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