ポイント
- 強誘電体となる二酸化ハフニウムジルコニウム中で自発分極により不揮発的に誘起される屈折率変調現象を初めて観測。
- 二酸化ハフニウムジルコニウムを堆積した窒化シリコン光導波路を用いた不揮発光移相器を実証。
- 二酸化ハフニウムジルコニウム中の非線形光学効果の解明が進むことで、プログラミング可能なシリコン光回路を用いた通信や生成AI・量子情報処理などのコンピューティング、センシングへの応用が期待。
東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻の竹中 充 教授、高城 和馬 大学院生(研究当時)、トープラサートポン・カシディット 准教授、高木 信一 教授らは、強誘電体二酸化ハフニウムジルコニウムに外部電界を印加することで生じる不揮発的屈折率変調を世界で初めて観測することに成功しました。また、透過型電子顕微鏡を用いて、外部電界印加前後の二酸化ハフニウムジルコニウムの結晶相や結晶方位を詳細に分析することで、不揮発的屈折率変調は二酸化ハフニウムジルコニウム中の自発分極の変化が要因であることを解明しました。さらに、窒化シリコン光導波路上に二酸化ハフニウムジルコニウムを堆積した光移相器を作製し、電圧印加により不揮発的に光位相を変調することにも成功しました。
今回の成果は、強誘電体二酸化ハフニウムジルコニウム中の非線形光学効果のさらなる解明につながるものと期待されます。また、二酸化ハフニウムジルコニウムは大規模集積回路向け半導体工場で容易に堆積できることから、今回の成果により二酸化ハフニウムジルコニウムを用いたシリコン光回路の発展が期待されます。さらに、二酸化ハフニウムジルコニウムを用いた不揮発光移相器を多数、シリコン光回路に集積することでプログラミング可能な光回路を実現することができます。プログラミング可能な光回路は、光通信や生成AI・量子情報処理などのコンピューティング、光レーダーなどのセンシングへの応用が期待されていることから、将来のグリーン情報システムの実現に大きく貢献するものと期待されます。
本成果は、2024年5月9日(英国夏時間)に英国科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版にて公開されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR2004)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)(課題番号:JPNP16007)およびJST 未来社会創造事業(課題番号:JPMJMI20A1)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(480KB)
<論文タイトル>
- “Nonvolatile optical phase shift in ferroelectric hafnium zirconium oxide”
- DOI:10.1038/s41467-024-47893-2
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
竹中 充(タケナカ ミツル)
東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻 教授
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<JST事業に関すること>
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科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
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<報道担当>
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