ポイント
- 植物のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の3グループが、それぞれ異なる核酸結合特性を持つことを明らかにしました。
- 3グループのうちの1つである核内で働くRISCは、RNAのみならず、DNAとも強く結合するという、これまで知られていなかった性質を持つことが示唆されました。
- 新たな遺伝子発現制御技術の開発へとつながることが期待されます。
立教大学 理学部の岩川 弘宙 准教授は、植物のRNA誘導サイレンシング複合体にはDNAに強く結合できるグループが存在することを発見しました。
真核生物において、20から30塩基程度の小分子RNAは、アルゴノート(AGO)と呼ばれるたんぱく質とRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成し、相補的なRNAと結合することで、標的遺伝子の発現を制御します。この機構はRNAサイレンシングと呼ばれ、生物の発生や分化、抗ウイルス反応など、さまざまな生物学的プロセスで重要な役割を果たします。植物は複数のAGOをコードしており、それらはアミノ酸配列の相同性から、3つのグループに分けられます。これまで、各グループに属するRISCの機能は研究されていましたが、それらのRISCがどのような核酸配列と強く結合するのかは不明なままでした。
今回、立教大学 理学部の岩川 弘宙 准教授は、植物における3つのグループのRISCが、それぞれ異なる核酸結合特性を持つことを明らかにしました。さらに、細胞質で働く2つのグループは、RNAと強く結合する一方で、核内で働くグループは、RNAと同等、もしくはそれ以上の強さでDNAと結合することを明らかにしました。これらの発見は、「植物のRISCがDNAと直接結合して機能する」という未知の機構の存在を示唆するとともに、新たな遺伝子発現制御ツールの開発につながると期待されます。
本研究成果の内容は、2024年4月16日(火)(日本時間)「Nucleic Acids Research」誌に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構 創発的研究支援事業(研究代表者:岩川 弘宙、課題番号:JPMJFR204O)、同 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(研究代表者:岩川 弘宙、課題番号:JPMJPR18K2)、文部科学省 科学研究費補助金 若手研究A(研究代表者:岩川 弘宙、課題番号:16H06159)、基盤研究B(研究代表者:岩川 弘宙、課題番号:23H02412)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(545KB)
<論文タイトル>
- “The clade-specific target recognition mechanisms of plant RISCs”
- DOI:10.1093/nar/gkae257
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
岩川 弘宙(イワカワ ヒロオキ)
立教大学 理学部 生命理学科 准教授
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<報道担当>
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