東京大学,理化学研究所,北海道大学,J-PARCセンター,高エネルギー加速器研究機構,科学技術振興機構(JST)

令和6年4月1日

東京大学
理化学研究所
北海道大学
J-PARCセンター
高エネルギー加速器研究機構
科学技術振興機構(JST)

多彩なスピン構造の間のトポロジカル数スイッチングに成功

~超高密度な新しい情報担体としての活用に期待~

ポイント

東京大学 大学院工学系研究科の吉持 遥人 大学院生、高木 里奈 助教(研究当時)、関 真一郎 准教授らの研究グループは、同大学 物性研究所の中島 多朗 准教授、北海道大学 大学院理学研究院の速水 賢 准教授らとの共同研究を通じて、GdRuGeという希土類合金において、外部磁場の大きさを変化させることで、「楕円形スキルミオン」や「メロン-アンチメロン分子」、「円形スキルミオン」といった多彩なスピン構造を観測することに成功しました。

磁性体で見られる電子スピンの渦構造である磁気スキルミオンは、トポロジーに保護された安定な粒子として振る舞うことから、次世代の情報担体の候補として注目を集めています。スキルミオンは従来、対称性の低い結晶構造を持つ物質のみで発現すると考えられてきました。しかし、近年では新しい形成機構によって、対称性の高い物質において直径数ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の極小サイズのスキルミオンが報告されています。

そこで本研究では、希土類合金GdRuGeを対象として研究を行った結果、本物質では直径2.7ナノメートルの極小サイズのスキルミオンが実現しており、さらに外部磁場の大きさに応じて複数の多彩なスピン構造が発現することを明らかにしました。本成果は、極小サイズのスキルミオンにまつわる新しい物質設計指針を与える結果であることに加え、本物質で見られるスキルミオンとメロン-アンチメロン分子は異なるトポロジカル数によって特徴付けられることから、外部磁場による多値メモリー動作といった新たな応用展開につながる可能性を秘めています。

本研究成果は、2024年4月1日(英国時間)に英国科学誌「Nature Physics」オンライン版に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CRESTの「未踏探索空間における革新的物質の開発」研究領域(No.JPMJCR23O4)および「量子状態の高度な制御に基づく革新的量子技術基盤の創出」研究領域(No.JPMJCR1874)、同 戦略的創造研究推進事業 さきがけの「トポロジカル材料科学と革新的機能創出」研究領域(No.JPMJPR18L5、JPMJPR20L8)および「情報担体とその集積のための材料・デバイス・システム」研究領域(No.JPMJPR20B4)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究S(No.JP21H04990、JP22H04965)、同 基盤研究A(No.JP18H03685、JP20H00349、JP21H04440)、同 挑戦的研究(萌芽)(No.JP21K18595)、同 若手研究(No.JP21K13876、JP23K13069)、同 新学術領域研究(研究領域提案型)(No.JP22H04468)、同 学術変革領域研究(A)(No.JP23H04869)、同 特別研究員奨励費(No.JP22KJ1061)、旭硝子財団、村田学術振興財団、東京大学 克研究奨励賞、UTEC-UTokyo FSI Research Grant Programの助成を受けて行われました。中性子散乱実験はJ-PARC 物質・生命科学実験施設の利用研究課題(2020S01)として、共鳴X線散乱実験は高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 フォトンファクトリーの研究課題(2020G665)としてそれぞれ行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Multistep topological transitions among meron and skyrmion crystals in a centrosymmetric magnet”
DOI:10.1038/s41567-024-02445-9

<お問い合わせ先>

(英文)“Multistep topological transitions among meron and skyrmion crystals in a centrosymmetric magnet”

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