NIMS、Seagate Technology(米国メーカー)、東北大学の研究グループは、データセンターの記録装置として用いられるハードディスクドライブ(HDD)において、磁気記録媒体を3次元化することで多値記録が可能であることを実証しました。IoTやDXに伴う記録媒体容量拡大の需要が高まる中、この実証は重要な意味を持ちます。
現在、HDDは垂直磁気記録方式が用いられており、記録密度を現在の1.5テラビット毎平方インチ(Tbit/in2)よりも飛躍的に増やすことができる磁気異方性の高い鉄白金(FePt)を用いた熱アシスト磁気記録方式(Heat-Assisted Magnetic Recording、HAMR)が、Seagate Technology社により実用化されています。しかし、このHAMRでさえ10 Tbit/in2を超える超高密度磁気記録は困難とされています。そのため、10 Tbit/in2級の超高密度磁気記録には、新しい原理の磁気記録方式が望まれています。
そこで当研究グループは3次元磁気記録法を提案しました。この方式は、従来の2次元記録層とは異なり、記録層を3次元的に積層することで記録密度を大幅に増加させます。現在のHAMR媒体は、非磁性の非晶質炭素マトリックス中に数ナノメートルの粒子状FePtを均一に分散させた2次元記録層からなります。この研究では、同様に非晶質炭素中に分散したルテニウム(Ru)粒子をスペーサーとすることで、格子整合したFePt/Ru/FePtの単一粒子を作製し、上下のFePtを独立なものとして、FePtの記録層を3次元的に配置しました。その結果、上下のFePt層がそれぞれ異なる磁化反転とキュリー点を示しました。これは、書き込みレーザーの出力の調整により3次元多値記録が可能であることを意味しています。
今後、FePt粒子のダウンサイジング、上部FePt層の配向および磁気異方性の改善、FePt層のさらなる多層化を進め、高密度HDDとして実用化に適した媒体構造の実現を目指します。
本研究は、NIMS 磁性・スピントロニクス材料研究センターのP. Tozman 特別研究員、高橋 有紀子 グループリーダー、Seagate Technology社のThomas Chang 研究員、東北大学のSimon Greaves 教授によって行われました。
本研究成果は、現地時間2024年3月24日付で学術誌「Acta Materialia」誌にオンライン掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「情報担体を活用した集積デバイス・システム」JPMJCR22C3の助成を受けたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(665KB)
<論文タイトル>
- “Dual-layer FePt-C granular media for multi-level heat-assisted magnetic recording”
- DOI:10.1016/j.actamat.2024.119869
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
<研究に関すること>高橋 有紀子(タカハシ ユキコ)
NIMS 磁性・スピントロニクス材料研究センター 磁気記録材料グループ グループリーダー
Tel:029-859-2719
E-mail:takahashi.yukikonims.go.jpThomas Chang(トーマス チャン)
Seagate Technology 研究員
E-mail:thomas.y.changseagate.comSimon Greaves(サイモン グリーブス)
東北大学 電気通信研究所 教授
E-mail:greaves.simon.john.a4tohoku.ac.jp -
<JST事業に関すること>
安藤 裕輔(アンドウ ユウスケ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3531 Fax:03-3222-2066
E-mail:crestjst.go.jp -
<報道担当>
NIMS 国際・広報部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
Tel:029-859-2026 Fax:029-859-2017
E-mail:pressreleaseml.nims.go.jpAgnieszka Zielinska(アグニェシュカ ジーリンスカ)
Seagate Technology
E-mail:agnieszka.zielinskaseagate.comNari Yoon(ナリ ウー)
Seagate Technology
E-mail:nari.yoonseagate.com東北大学 電気通信研究所 総務係
E-mail:riec-somugrp.tohoku.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp