ポイント
- 常温で水素から電子を抽出・貯蔵し、必要な時にいつでも、有機合成や医薬品合成に重要なシクロプロパン化反応に利用できる水素エネルギーキャリアを開発した。
- 開発した水素エネルギーキャリアは、固体状態で、水素の電子を3ヵ月以上保存できる。
- 水素を電子源として使用することで、金属廃棄物を出さない環境にやさしい有機合成反応を実現した。
水素は利用するときに温室効果ガスを排出しないため、カーボンニュートラル実現のカギとなるクリーンエネルギーとして注目が集まっています。しかし、気体のままでは貯蔵・運搬の効率が低いため、多くのエネルギーを必要とせずに貯蔵・運搬し、そのまま利用できる水素エネルギーキャリアの革新が求められています。
九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER)/大学院工学研究院の小江 誠司 主幹教授らの研究グループは、近畿大学との共同研究により、常温で水素から電子を抽出・貯蔵し、必要な時はいつでもシクロプロパン化反応に利用できる水素エネルギーキャリアとして遷移金属触媒(イリジウム化合物)を開発しました。開発した水素エネルギーキャリアは、水素から「水素ラジカル(H•)」もしくは「ヒドリド(H–)」ではなく「電子」を抽出・貯蔵でき、固体状態で、水素の電子を3ヵ月以上保存できます。水素を電子源として使用することで、金属廃棄物を出さずに、有機合成や医薬品合成に重要なシクロプロパン化反応を実現したことは、社会的・学術的に大きな意義があります。
本研究成果は、アメリカ化学会の雑誌「JACS Au」オンライン版で2024年3月26日(日本時間)に公開されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「電子貯蔵触媒技術による新プロセスの構築」(課題番号:JPMJCR18R2)の研究の一環として、九州大学の小江 誠司 主幹教授の研究グループが、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)、大学院工学研究院、小分子エネルギーセンターで行ったものです。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Cyclopropanation using Electrons Derived from Hydrogen-Reaction of Alkenes and Hydrogen without Hydrogenation”
- DOI:10.1021/jacsau.4c00098
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
小江 誠司(オゴウ セイジ)
九州大学 大学院工学研究院 主幹教授
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<JST事業に関すること>
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科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
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<報道担当>
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