京都大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年3月21日

京都大学
科学技術振興機構(JST)

Ca2+やcAMPを感知する蛍光たんぱく質を開発

~生きた動物の細胞内セカンドメッセンジャーの動きを観察する~

Ca2+(カルシウムイオン)やcAMP(3'-5'-アデノシン一リン酸)は、多くの生物の細胞内で情報伝達を担う重要な分子です。Ca2+とcAMPは、互いに影響しながら時々刻々とその細胞内濃度が制御されることで、細胞は役割を果たします。しかし、生きた動物のCa2+とcAMPの動態を、同時に高精度に観察する技術がこれまで不十分であったため、Ca2+とcAMPの間の関係性を精確に調べることはできませんでした。

今回、京都大学 大学院生命科学研究科 坂本 雅行 准教授、横山 達士 研究員らの研究グループは、理化学研究所、山梨大学、東京大学と共同で、Ca2+を感知する赤色の蛍光たんぱく質「RCaMP3」と、cAMPを感知する緑色の蛍光たんぱく質「cAMPinG1」を開発しました。RCaMP3やcAMPinG1はそれぞれ、Ca2+やcAMPと結合すると、その蛍光が明るくなります。RCaMP3とcAMPinG1の両方を、生きたマウスの大脳皮質に存在する神経細胞に発現させ、蛍光顕微鏡で観察したところ、Ca2+とcAMPの間の関係性を明らかにすることができました。この成果は、精神・神経疾患の病態解明および治療法の開発につながるものと期待されます。

本研究成果は、科学雑誌「Nature Methods」2024年3月21日付(英国時間)に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業のさきがけ研究領域「革新的光科学技術を駆使した最先端科学の創出」における研究課題「コンピュータホログラフィーを応用した活動電位発生機構の解明」(JPMJPR1906、坂本 雅行)ならびに科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業のACT-X研究領域「生命と化学」における研究課題「タンパク工学を基点としたオーファンGPCRの機能解明」(JPMJAX211K、横山 達士)、日本医療研究開発機構(AEMD) 脳とこころの研究推進プログラム(領域横断的かつ萌芽的脳研究プロジェクト)における研究課題「光学的膜電位計測を応用した神経ネットワーク解析技術の開発」(JP21wm0525004、坂本 雅行)の支援によって得られた成果です。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“A multicolor suite for deciphering population coding of calcium and cAMP in vivo
DOI:10.1038/s41592-024-02222-9

<お問い合わせ先>

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