東京大学,理化学研究所,大阪大学,学習院大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年3月12日

東京大学
理化学研究所
大阪大学
学習院大学
科学技術振興機構(JST)

トポロジカル物質で高い操作性を持つ光周波数変換機能を実現

~ワイル半金属を用いた光スイッチングデバイスなどへの応用に期待~

ポイント

東京大学 大学院工学系研究科の正力 健太郎 大学院生、岡村 嘉大 助教、森石 奎吾 大学院生、高橋 陽太郎 准教授らを中心とする研究グループは、理化学研究所 創発物性科学研究センターの十倉 好紀 センター長、大阪大学 大学院理学研究科の村川 寛 助教、酒井 英明 准教授、花咲 徳亮 教授、学習院大学 理学部の横井 滉平 助教、島根大学 学術研究院理工学系の臼井 秀知 助教らの研究グループと共同で、磁化と実効的な電気分極を持つワイル半金属において、非線形光学効果の1つである第2次高調波(SHG、光の周波数を2倍に変換する現象)が極めて高い効率で発生することを示し、そのSHGの強度が光の進行方向や磁化の向きでスイッチング可能であることを実証しました。

トポロジーと呼ばれる数学上の概念で記述される物質や物理現象が世界的に注目されており、ワイル半金属はその代表例です。トポロジカルな性質が物質の新たな機能として活用されることが期待されていますが、いまだその例は限られています。今回、本研究グループが着目したワイル半金属PrAlGeは、実効的な電気分極を持つために、光を照射すると非線形光学効果であるSHGが生じます。実際にSHGの発生強度を測定した結果、発生効率の指標となる非線形感受率が、既知の物質と比べても極めて巨大なものであることが分かりました。また、同時に発生する磁化に由来したSHGとの干渉効果により、さまざまな光機能性が発現することを見いだしました。例えば、磁化の向きによってSHG発生強度が変調し、光の入射方向を反転するとSHG強度のスイッチングが起きるといった現象が観測されました。このような性質は将来の光スイッチングデバイスの基礎原理となるものです。本成果は、トポロジカル物質とマルチフェロイクスが融合した物質機能の実証といえるもので、今後期待されるさまざまな線形・非線形電磁気応答の開拓への道を開くものです。

本研究成果は、2024年3月14日(米国東部夏時間)に米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」のオンライン版に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR212X)、日本学術振興会(JSPS) 科研費「新学術領域研究(研究領域提案型)(課題番号:22H04470)」、「基盤研究S(課題番号:23H05431)」の支援により実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Large nonlinear optical magnetoelectric response in a noncentrosymmetric magnetic Weyl semimetal”
DOI:10.1073/pnas.2316910121

<お問い合わせ先>

(英文)“Large nonlinear optical magnetoelectric response in a noncentrosymmetric magnetic Weyl semimetal”

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