ポイント
- 接着と剥離は、私たち人類が古くから広く利用してきた現象ですが、そのメカニズムは明確に理解されていませんでした。
- 最先端の透過型電子顕微鏡法(TEM)による計測と分子シミュレーションを融合することで、無機材料の表面化学状態が、有機材料(接着剤)の分子構造や界面剥離挙動、さらに接着強度に大きな影響を与えることを世界で初めて分子レベルで解明しました。
- 本成果は、異なる種類の材料間の接着強度や剥離特性の分子論的理解への道を開き、輸送機器の軽量・低燃費化や材料の易解体性の向上を通して低炭素・循環型社会の実現に貢献すると期待されます。
異種材料間の接着強度や剥離性能を自在に制御するためには、有機材料(接着剤)と無機材料の間の接着・剥離現象を分子レベルから理解する必要があります。しかし、無機材料の“表面化学状態”が接着剤の分子構造や接着強度に与える影響については、今日まで十分に理解されていませんでした。
東北大学 多元物質科学研究所の陣内 浩司 教授とファインセラミックスセンターらのグループは、新規に開発した接着強度試験法に加え、最先端の電子顕微鏡計測と分子シミュレーションを融合的に用いることで、無機材料の表面化学状態が接着剤の化学組成や分子構造などに与える影響を分子レベルから解明することに初めて成功しました。本研究により接着界面近傍の分子構造と巨視的物性との相関が明らかになり、耐久性に優れた複合材料や環境負荷の小さい接着技術の開発、ひいては持続可能な社会の実現に貢献すると期待されます。
本研究成果は、2024年3月8日(英国時間)に、学術誌「Nature Communications」に公開されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST)(課題番号:JPMJCR1993、JPMJCR19T4)、日本学術振興会(JSPS) 科研費(課題番号:JP20K15330、JP22H00329、JP23H02017)の助成、および文部科学省委託事業 ナノテクノロジープラットフォーム(東北大学および京都大学 構微細構造解析プラットフォーム)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(720KB)
<論文タイトル>
- “Effect of Inorganic Material Surface Chemistry on Structures and Fracture Behaviours of Epoxy Resin”
- DOI:10.1038/s41467-024-46138-6
<お問い合わせ先>
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陣内 浩司(ジンナイ ヒロシ)
東北大学 多元物質科学研究所 教授
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<JST事業に関すること>
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科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
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