ポイント
- 第3の固体「準結晶」の原子配列秩序を持ったファンデルワールス層状物質が超伝導性を示すことを発見した。
- ファンデルワールス層状物質は、構造の2次元性を反映した特異な物性、およびそれを利用した新奇デバイス開発への期待から、近年盛んに研究されているが、従来研究対象となっていたものはいずれも「結晶」である。今回世界で初めて、ファンデルワールス層状「準結晶」の低温物性を調べ、超伝導を発見した。
- この発見は、未解明の準結晶超伝導の発現機構の解明につながるものと期待される。また、本研究は、この新物質群の物性研究の足がかりとなるもので、これを利用した新奇デバイスの開発につながることが期待される。
東京大学 生産技術研究所の徳本 有紀 講師、枝川 圭一 教授らの研究グループは、東京理科大学 先進工学部の田村 隆治 教授らのグループと共同で、結晶、アモルファスとは異なる第3の固体「準結晶」の構造秩序を持ったタンタル–テルル(Ta–Te)系ファンデルワールス層状物質の低温電子物性を調べ、この物質が1ケルビン以下の温度域で超伝導性を示すことを発見しました。
ファンデルワールス層状物質は、構造の2次元性を反映した特異な物性、およびそれを利用した新奇デバイス開発への期待から、近年、盛んに研究されていますが、従来研究対象となっていたものはいずれも周期的な原子配列を持った「結晶」です。結晶とは本質的に異なる原子配列秩序を持ったファンデルワールス層状「準結晶」において、今回世界で初めて、超伝導が発見されました。この発見は、いまだ解明されていない準結晶超伝導の発現機構の解明につながるものと期待されます。また、本研究は、この新物質群の物性研究の足がかりとなるもので、これを利用した新奇デバイスの開発につながることが期待されます。
本成果は、2024年3月1日(英国時間)に「Nature Communications」のオンライン版で公開されます。
本研究は、JST「CREST(課題番号:JPMJCR22O3)」、JSPS 科研費「新学術領域研究(課題番号:JP19H05821)」、「基盤研究(C)(課題番号:JP23K04355)」の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(496KB)
<論文タイトル>
- “Superconductivity in a van der Waals layered quasicrystal”
- DOI:10.1038/S41467-024-45952-2
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
枝川 圭一(エダガワ ケイイチ)
東京大学 生産技術研究所 教授
Tel:03-5452-6109
E-mail:edagawaiis.u-tokyo.ac.jp
徳本 有紀(トクモト ユキ)
東京大学 生産技術研究所 講師
Tel:03-5452-6324
E-mail:tokumotoiis.u-tokyo.ac.jp
-
<JST事業に関すること>
安藤 裕輔(アンドウ ユウスケ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3531 Fax:03-3222-2066
E-mail:crestjst.go.jp
-
<報道担当>
東京大学 生産技術研究所 広報室
Tel:03-5452-6738
E-mail:proiis.u-tokyo.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp