ポイント
- 悪性リンパ腫の原因となるEBウイルス(Epstein-Barrウイルス)が持つBNRF1遺伝子は感染細胞の細胞死を抑制し、安定した増殖を可能にする
- BNRF1が誘導する“安定な細胞増殖”にはミトコンドリアたんぱく質IFI27が関与する
- BNRF1やIFI27が存在しないEBウイルス感染細胞の腫瘍形成能は著しく低下し、EBウイルス関連腫瘍の形成には効率的なエネルギー産生が必要である
名古屋大学 大学院医学系研究科 ウイルス学の木村 宏 教授、佐藤 好隆 准教授らの研究グループは、血液・腫瘍内科学の清井 仁 教授、佐合 健 大学院生、生体反応病理学の豊國 伸哉 教授、名古屋市立大学 ウイルス学の奥野 友介 教授、藤田医科大学 ウイルス学の村田 貴之 教授らとの共同研究で、発がんウイルス Epstein-BarrウイルスがB細胞を不死化する際にウイルス因子BNRF1が宿主因子IFI27を誘導し、安定した細胞増殖能を獲得することを明らかにしました。
Epstein-Barrウイルス関連リンパ腫は、一般に抗がん剤が効きにくく、予後不良であることが知られており、これらのリンパ腫に有効な治療法の開発が求められています。本発見は、BNRF1やIFI27を治療標的とする新たな治療法の開発につながると期待されます。
本研究成果は、2024年2月1日付(日本時間2月2日)国際学術誌「PLOS Pathogens」に掲載されます。
本研究は日本医療研究開発機構(AMED) 新興・再興感染症研究基盤創生事業(多分野融合研究領域)「ウイルス感染後に感染細胞の核内に出現する構造体の時空間的解析」(JP21wm0325042)(研究代表者 佐藤 好隆)や科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST領域「細胞外微粒子に起因する生命現象の解明とその制御に向けた基盤技術の創出」における研究課題「細胞外微粒子への生体応答と発がん・動脈硬化症との関連の解析」(JPMJCR19H4)(研究代表者 豊國 伸哉)などの支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(418KB)
<論文タイトル>
- “Epstein-Barr virus lytic gene BNRF1 promotes B-cell lymphomagenesis via IFI27 upregulation”
- DOI:10.1371/journal.ppat.1011954
<お問い合わせ先>
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佐藤 好隆(サトウ ヨシタカ)
名古屋大学 大学院医学系研究科 ウイルス学 准教授
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<JST事業に関すること>
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科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ
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