京都大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年1月23日

京都大学
科学技術振興機構(JST)

細胞核内のDNAが二重らせんの逆ねじりでゆるむ仕組みを解明

~人為的な遺伝情報の読み出し制御による遺伝子治療技術への応用にも期待~

生物の遺伝情報を担うDNAは、二重らせんの構造を形成しています。細胞内では、DNAの二重らせんがゆるむことで、さまざまな機能を持ったたんぱく質がDNAに結合・集積し、遺伝情報の読み出し・コピー・修復などの多彩な機能が発揮されます。これまで、特定のたんぱく質がDNAに対してトルクを発生させることで二重らせんをゆるめる仕組みが提案されていましたが、実際には、ふらふらしたDNAの1点に力をかけてねじるだけでは、二重らせんはなかなかゆるみません。

福手 淳平 京都大学 大学院生命科学研究科 博士後期課程学生、牧 功一郎 京都大学 医生物学研究所 助教、安達 泰治 同研究所 教授は、細胞内において、従来のトルクを発生するモーター分子に加え、DNAの軸回転を抑える構造が存在することで、DNAの二重らせんが逆にねじられる力学的な仕組みを明らかにしました。具体的には、細胞に取り込ませた二重らせんのゆるいソラレン誘導体を蛍光標識することで、DNAの二重らせんがゆるむ発生場所をつきとめました。さらにクロマチン免疫沈降解析により、二重らせんがゆるむ場所では、DNAがたんぱく質の集合体にアンカリングされていることを見いだしました。このDNAとたんぱく質集合体の結合を阻害すると二重らせん構造が元に戻ったことから、たんぱく質集合体へのアンカリングを介したDNAの軸回転の抑制が、DNAの二重らせんがゆるむために必要であることが示されました。

将来は、DNAの二重らせんを人為的にゆるめることで、遺伝情報の読み出しのオン・オフを制御することが可能となると考えられ、新たなゲノム編集・遺伝子治療技術としての応用が期待されます。

本研究成果は、2024年1月23日に国際学術誌「Communications Biology」にオンライン掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST)における戦略的創造研究推進事業 CREST「多細胞間での時空間的相互作用の理解を目指した定量的解析基盤の創出」研究領域(研究総括:松田 道行) 研究課題名「生理的組織リモデリング機構の解明と臓器操作技術の開発」(課題番号:JPMJCR2023、研究代表者:豊島 文子)の一環として行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“The nucleolar shell provides anchoring sites for DNA untwisting”
https://www.nature.com/articles/s42003-023-05750-w

<お問い合わせ先>

(英文)“The nucleolar shell provides anchoring sites for DNA untwisting”

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