ポイント
- 血液中のさまざまなたんぱく質加水分解酵素の活性異常を1分子のレベルで網羅的に解析する方法を開発した。
- 膵臓(すいぞう)がん患者の血液中における酵素活性異常を解析し、早期から観察される特異な酵素活性異常を見いだした。
- 見いだされた活性異常に基づき、膵臓がん早期発見に資するリキッドバイオプシー技術の社会実装が期待される。
東京大学 大学院薬学系研究科の小松 徹 助教、坂本 眞伍 特任研究員(研究当時)、水野 忠快 助教、浦野 泰照 教授、理化学研究所 開拓研究本部の渡邉 力也 主任研究員、日本医科大学 大学院医学研究科の本田 一文 大学院教授らの研究グループは、半自動合成を用いた蛍光プローブの網羅的合成技術の開発をおこない、マイクロデバイスを用いた1分子酵素活性計測技術により血液中のさまざまなたんぱく質加水分解酵素の活性を1分子レベルで解析する方法論を開発しました。さらに、これを用いて、早期膵臓がん患者の血漿(けっしょう)中においてエラスターゼ、CD13、DPP4などの酵素の活性異常が起きている様子を明らかにしました。
これは、106-109分子の集団として酵素活性を解析する従来のたんぱく質機能解析技術では見いだすことができなかった1分子ごとの個性を反映した解析によって、はじめて可能になった成果です。血液中の1分子レベルの酵素活性異常を検出し、疾患の早期発見に資するリキッドバイオプシー技術の確立へとつながる研究成果として、社会実装が期待されます。
本論文は、米国科学誌「Cell Reports Methods」(2024年1月12日オンライン公開、1月22日発刊)に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 大学発新産業創出プログラム(START)プロジェクト支援型「1分子計測リキッドバイオプシーの事業化(課題番号:JPMJST2011)」、さきがけ(疾患代謝領域)「タンパク質の動的機能の理解に基づく新たな疾患バイオマーカー・創薬標的分子探索法の開発(課題番号:JPMJPR1332)」、日本医療研究開発機構(AMED) FORCE「Proteoformレベルの酵素機能網羅的解析に基づく疾患診断技術の開発(課題番号:22581634)」、科研費「基盤研究(B)(課題番号:19H02846、22H02217)」、科研費「学術変革領域研究(A)(課題番号:21A303)」、内藤記念科学振興財団、持田記念医学薬学振興財団、中外創薬科学財団、MSD生命科学財団の支援などにより実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(947KB)
<論文タイトル>
- “Identification of activity-based biomarkers for early-stage pancreatic tumors in blood using single-molecule enzyme activity screening”
- DOI:10.1016/j.crmeth.2023.100688
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