東北大学,科学技術振興機構(JST)

令和6年1月8日

東北大学
科学技術振興機構(JST)

トポロジカル磁性体の磁気熱電効果で起電力生成に成功

~ゼロ磁場下でも熱電変換動作が可能で創エネや省エネに期待~

ポイント

電子産業におけるエネルギーの効率的な利用への要請が強まる中、熱を電気に変換する熱電変換材料に注目が集まっています。トポロジカル物質科学の分野では、巨大な磁気熱電効果を示す磁性体が報告されており、磁気熱電変換素子や熱流センサへの応用が期待されています。異常ネルンスト効果から大きな熱起電力を取り出すために、熱起電力の符号の異なる層を接続して電圧を増強する素子、サーモパイルが提案されています。これまでの報告は、熱起電力の符号の異なる二種の物質を組み合わせたもので、作製には異なる構成原料や合成プロセスを用いる必要があります。同一の物質系で磁気熱電変換特性(異常ネルンスト係数)の符号そのものを簡便に制御できれば、素子化への道が大きく開けることが期待されますが、そのような例はありませんでした。

東北大学 金属材料研究所の野口 駿 大学院生(研究当時)、藤原 宏平 准教授と塚﨑 敦 教授、富山県立大学の柳 有起 准教授、物質・材料研究機構(NIMS)の平井 孝昌 研究員らの研究グループは、代表的な強磁性トポロジカル半金属であるコバルトスズ硫黄化合物の電子状態に着目し、元素置換した薄膜試料を作製することで、異常ネルンスト係数の符号を正・負の双方に制御できることを明らかにしました。さらに、元素置換で作り分けた2つの強磁性層を接続してサーモパイル素子を作製し、ゼロ磁場下での熱電変換動作を実証しました。

この成果はトポロジカル物質に基づく磁気熱電変換材料の開発やエネルギーハーベストの実現に向けた関連技術の高度化に寄与すると期待されます。本研究成果は2024年1月8日(英国時間)に、科学誌「Nature Physics」オンライン版に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業CREST「トポロジカル機能界面の創出」(研究代表者:塚﨑 敦、課題番号:JPMJCR18T2)、同 戦略的創造研究推進事業ERATO「内田磁性熱動体プロジェクト」(研究代表者:内田 健一、課題番号:JPMJER2201)、科学研究費補助金(課題番号:JP22H00288、JP21H01789、JP21H04437、JP19H01842、JP20K05299、JP21H01031)の支援を受けました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Bipolarity of large anomalous Hall effect in Weyl magnet-based alloy films”
DOI:10.1038/s41567-023-02293-z

<お問い合わせ先>

(英文)“Bipolarity of large anomalous Hall effect in Weyl magnet-based alloy films”

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