ポイント
- テトラフルオロスルファニル(SF4)アセチレンの合成に成功
- 50種類を超える新規なSF4アセチレン物質を合成
- SF4アセチレンからさまざまなSF4化合物に変換可能
- PFAS代替品や環境に配慮した農薬の開発研究に拍車
フッ素を有機分子に導入することで、化学的安定性などの特定の性質が付加されることが知られており、有機フッ素化合物は医薬品や殺虫剤などの薬品類から、フライパン、エアコン、冷蔵庫のガスなどの日常製品まで幅広い用途で活用されています。しかし近年、環境への懸念から有機フッ素化合物の規制が拡大されつつあります。特にPFASの使用規制が進む中、PFASに該当しない環境性に優れた代替品の需要が高まっています。
名古屋工業大学 大学院工学研究科 共同ナノメディシン科学専攻および工学専攻(生命・応用化学領域)の柴田 哲男 教授らの研究グループは、テトラフルオロスルファニル(SF4)化合物が、PFASに代わる環境負荷の低い有機フッ素化合物になりうると考え、その合成素子であるSF4アセチレン化合物群の画期的な合成手法の開発に成功しました。本研究では、銅(Cu)触媒と芳香族ジアゾニウム塩を使用したラジカル反応を応用することで、さまざまなSF4アセチレン誘導体を短時間で合成することができます。この手法は基質適応性が高く、多彩な官能基で修飾されたSF4アセチレン化合物の合成に応用できます。さらに得られたSF4アセチレン化合物は、より複雑なSF4化合物群に分子変換が可能です。SF4化合物はPFAS規制対象外の有機フッ素化合物です。この成果により、PFAS代替品の開発研究が進み環境に優しい有機フッ素化合物の合成が実現することが期待されます。
この研究成果は、2023年12月31日(現地時間)に総合科学誌「Advanced Science」のweb版で公開されました。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業(CREST) 研究領域「分解・劣化・安定化の精密材料科学」(研究総括:高原 淳(九州大学 ネガティブエミッションテクノロジー研究センター 特任教授)における研究課題「フッ素循環社会を実現するフッ素材料の精密分解」(研究代表者: 柴田 哲男)(課題番号JPMJCR21L1)の支援を受けて実施しました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(982KB)
<論文タイトル>
- “Expanding the Frontier of Linear Drug Design: Cu-Catalyzed Csp-Csp3-Coupling of Electron-Deficient SF4-Alkynes with Alkyl Iodides”
- DOI:10.1002/advs.202306554
<お問い合わせ先>
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柴田 哲男(シバタ ノリオ)
名古屋工業大学 大学院工学研究科 教授
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<JST事業に関すること>
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