ポイント
- たんぱく質機能の向上が期待される有用変異点の同定と、多点変異組み合わせ最適化を行う進化的アルゴリズム(GA)を基盤とするたんぱく質デザイン法「GAOptimizer(ジーエーオプティマイザー)法」を開発しました。
- GAOptimizer法を用いて異なる3つのファミリーに属する酵素群の高機能化に成功しました。
- 本法を用いることで、産業応用のポテンシャルを秘めた数多くのたんぱく質の高機能化が達成し、たんぱく質を用いた次世代生体素材の開発が加速すると期待されます。
多様な機能を持つたんぱく質は、次世代生体素材の1つとして注目されています。一方で応用利用に適した機能を有する天然由来たんぱく質を取得することは難しく、多くの場合はその機能を目的に応じて向上させる必要があります。たんぱく質工学は上記課題を解決できる手法の1つであり、AIを始めとした情報科学技術を活用した高機能化たんぱく質デザイン法の開発が世界的にも進展しています。
静岡県立大学の中野 祥吾 准教授および小澤 洋樹 氏(博士前期課程1年)らの研究チームは、コンピューター内でたんぱく質をバーチャル進化させることで、高機能なたんぱく質をデザインできる新たな手法「GAOptimizer法」を開発しました。構造・配列・機能が異なる3種類のたんぱく質に本法を適用してデザインした人工たんぱく質は、鋳型とした天然由来たんぱく質と比べて応用利用に適した優れた機能を有することを実験的に確認しました。
今回の成果は、産業応用のポテンシャルを秘めた天然由来たんぱく質の高機能化デザインを可能とし、たんぱく質を用いた次世代生体素材の開発を加速することが期待されます。一例としてグリーントランスフォーメーションを実現するための基盤となる高機能化酵素の開発への応用が考えられます。
本成果は2024年1月3日(現地時間)に米国の科学雑誌「Cell Reports Physical Science」に掲載されます。
この研究は、JST さきがけ(課題番号JPMJPR20AB)および日本学術振興会(JSPS)の若手研究(課題番号18K14391)、基盤研究C(課題番号21K05395、23K04510)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(837KB)
<論文タイトル>
- “Development of Evolutionary Algorithm-Based Protein Redesign Method”
- DOI:10.1016/j.xcrp.2023.101758
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