東京大学,山形大学,産業技術総合研究所,科学技術振興機構(JST)

※プレスリリース資料の4ページ目、課題番号の記載に誤りがあったため、差し替えました(令和5年12月22日)。

令和5年12月20日

東京大学
山形大学
産業技術総合研究所
科学技術振興機構(JST)

細胞小器官の膜を溶解する酵素の活性化機構を解明

ポイント

東京大学 大学院新領域創成科学研究科の佐々木 杏佳 技術員、鈴木 邦律 准教授、山形大学 学術研究院(理学部主担当)の渡邊 康紀 准教授、同大学 理学部の岩﨑 佑里菜 学部生(研究当時)、産業技術総合研究所 細胞分子工学研究部門の本野 千恵 主任研究員、今井 賢一郎 研究グループ長らによる研究グループは、リン脂質を分解する酵素Atg15リパーゼの活性化機構を明らかにしました。

ヒトを含む真核生物は、細胞内部にリン脂質からなる生体膜で区切られた細胞小器官を持ちます。古くなった細胞小器官はオートファジーと呼ばれる細胞内分解システムにより、液胞に輸送されたのち分解されますが、そのためには、まず細胞小器官を包んでいる生体膜を分解しなければなりません。

これまでの研究で、Atg15を持たない細胞において液胞内に未消化の細胞小器官が蓄積することが知られていましたが、Atg15が直接生体膜を分解する活性を持っているかどうかは明らかになっていませんでした。

今回、Atg15の組み換えたんぱく質を大量精製することに成功しました。そして、精製されたAtg15はリン脂質を分解する活性を持つことを確認しました。さらに、たんぱく質分解酵素で処理するとAtg15の活性が増強し、細胞小器官を包むリン脂質膜を分解できるようになることを発見しました。

これまでに知られているリン脂質分解酵素は、対象となるリン脂質を無差別に分解するものしか知られていませんでした。Atg15は特定の条件で細胞内小器官を分解する活性を発揮する点で新規の活性を持つ酵素であり、反応条件を制御することで、特定の細胞小器官の分解や、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスのようなエンベロープウイルスの不活化などへの応用が期待されます。

本研究成果は2023年12月19日付け(現地時間)で、国際科学誌「Cell Reports」にオンライン掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業CREST 研究領域「細胞内現象の時空間ダイナミクス(課題番号JPMJCR20E3)」、ならびに日本学術振興会 科学研究費助成事業(23K11313、22K0609、22H02569、21K19205、21H03551、20H05313)の一環として行われました。また本研究は、内藤記念科学振興財団および日本医療研究開発機構(AMED) 創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)(課題番号23ama121029j0002)の支援を受け行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Atg15 is a vacuolar phospholipase that disintegrates organelle membranes”
DOI:10.1016/j.celrep.2023.113567

<お問い合わせ先>

(英文)“Atg15 is a vacuolar phospholipase that disintegrates organelle membranes”

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