東海国立大学機構 名古屋大学,九州大学,京都大学,東京大学,理化学研究所,科学技術振興機構(JST),国立感染症研究所

令和5年12月19日

東海国立大学機構 名古屋大学
九州大学
京都大学
東京大学
理化学研究所
科学技術振興機構(JST)
国立感染症研究所

新型コロナウイルス排出と粘膜抗体の関係を解明

~呼吸器ウイルスのヒト間伝播を制御・予防する第一歩~

ポイント

東海国立大学機構 名古屋大学 大学院理学研究科の西山 尚来 博士後期課程、岩見 真吾 教授らの研究グループは、国立感染症研究所 感染病理部の鈴木 忠樹 部長らとの共同研究でオミクロン感染者の臨床検体を数理科学的に分析することで、粘膜表面における分泌型Ig-A(S-IgA)抗体の誘導が早い症例ほど感染性ウイルス排出期間が短くなる傾向を明らかにしました。The first few hundred調査と呼ばれる積極的疫学調査で得られたデータと試料を倫理審査委員会の承認を得て二次利用し合計122人のデータを分析すると、S-IgA抗体は鼻粘膜検体において他の抗体(IgG抗体やIgA抗体)よりもウイルス量や感染力を強く抑制する傾向も見られました。なお、新型コロナウイルスへの感染歴やワクチン接種歴がある感染者ほどS-IgA抗体の誘導時間が短くなることも明らかになりました。本研究は、呼吸器ウイルス感染症において分泌型粘膜抗体が感染性ウイルス排出を抑制する可能性をヒトで示した世界で初めての報告となります。

現在、mRNAワクチンによりCOVID-19による重症化や死亡のリスクは著しく低減されました。一方で、呼吸器ウイルスによるパンデミックでは、ヒト間伝播を制御・予防する課題が浮き彫りになりました。本研究成果により、粘膜免疫を標的とした次世代のワクチン開発が加速され、将来、呼吸器系ウイルスによるヒト間伝播を予防し、パンデミックを制御するための新たな戦略を与えることが期待されます。

本研究成果は、2023年12月19日(日本時間)付国際学術雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載されます。

本研究は、2021年度から始まったJST ムーンショット型研究開発事業(目標2)およびAMED 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業の支援のもとで行われたものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Infectious virus shedding duration reflects secretory IgA antibody response latency after SARS-CoV-2 infection”
DOI:10.1073/pnas.2314808120

<お問い合わせ先>

(英文)“Infectious virus shedding duration reflects secretory IgA antibody response latency after SARS-CoV-2 infection”

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