理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

令和5年12月14日

理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

素子間の結合で異常ジョセフソン効果を創発

~素子の結合を制御して実現する超伝導機能性~

理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター 量子機能システム研究グループの松尾 貞茂 研究員、井本 隆哉 研修生(研究当時)、佐藤 洋介 リサーチアソシエイト(研究当時)、樽茶 清悟 グループディレクター(量子コンピューター研究センター 半導体量子情報デバイス研究チーム チームリーダー)らの国際共同研究グループは、2つのジョセフソン接合がコヒーレント結合した際に創発される異常ジョセフソン効果の観測とその制御に成功しました。

本研究成果はジョセフソン接合のコヒーレント結合を用いた位相バッテリーなどの新機能超伝導素子の実現に貢献するものです。

ジョセフソン接合は2つの超伝導体の間に絶縁体や伝導体を挟んだ素子です。磁気センサーや量子コンピューターにおいて主要な役割を担います。近年、2つのジョセフソン接合が超伝導電極を共有する場合に、新奇超伝導現象が発現することが理論的に提案され、注目されています。

今回、国際共同研究グループは半導体を介した2つのジョセフソン接合がコヒーレント結合した素子について、接合を流れる超伝導電流が各接合の位相差に対してどのような依存性を持つのかを評価しました。その結果、一方の接合を流れる超伝導電流について、その接合自身の持つ位相差(局所位相差)がゼロであるにもかかわらず他方の接合の位相差(非局所位相差)を制御すると有限の超伝導電流が流れることが分かりました。これは2つの接合のコヒーレント結合により異常ジョセフソン効果が発現したことを示しています。

本研究は、オンライン科学雑誌「Science Advances」(2023年12月13日付:日本時間12月14日)に掲載されます。

本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業基盤研究(S)「非可換エニオンの電気的光学的制御(研究代表者:樽茶 清悟、19H05610)」、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業「スピン制御による新奇ジョセフソン超伝導現象の開拓(研究代表者:松尾 貞茂、JPMJFR223A)」、同 戦略的創造研究推進事業さきがけ「並列二重ナノ細線と超伝導体の接合を用いた無磁場でのマヨラナ粒子の実現(研究代表者:松尾 貞茂、JPMJPR18L8)」、新世代研究所(ATI)研究助成「並列ジョセフソン接合間に流れる非局所超伝導電流の制御」による助成を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Phase engineering of anomalous Josephson effect derived from Andreev molecules”
DOI:10.1126/sciadv.adj3698

<お問い合わせ先>

(英文)“Phase engineering of anomalous Josephson effect derived from Andreev molecules”

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