ポイント
- マヨラナ粒子はいまだ実存証明されていない素粒子ですが、特殊な磁性絶縁体中では、強い量子もつれ状態として実現することが予言されていたものの、それを実験で測定する方法は不明でした。
- 今回、理論解析と数値シミュレーションによって、マヨラナ粒子の量子もつれを利用した量子テレポーテーション現象を解明し、電気的に測定可能であることを示しました。
- 上記の測定は、物質中のマヨラナ粒子の実存証明を与えます。また、マヨラナ粒子を用いたトポロジカル量子コンピューターの実現への道を切り開きます。
大阪大学 大学院基礎工学研究科の大学院生 高橋 雅大 さん、水島 健 准教授、藤本 聡 教授、東京大学 大学院理学系研究科の山田 昌彦 特任講師、学習院大学 理学部 物理学科の宇田川 将文 教授からなる研究チームが、特殊な磁性体中に存在するマヨラナ粒子の量子もつれを利用した、量子テレポーテーション現象を理論的に解明しました。
素粒子の1つとして1937年に理論提案されたマヨラナ粒子は、実験的には未発見の幻の粒子です。近年、特殊な磁性絶縁体中にマヨラナ粒子が出現する可能性が指摘され、物質中のマヨラナ粒子の探索が盛んに行われています。これまで、物質中のマヨラナ粒子は強い量子もつれ状態にあると知られていましたが、それを実験的に測定する方法は不明でした。
今回、解析的な理論計算と数値シミュレーションを組み合わせることで、物質中のマヨラナ粒子の量子もつれを介して、遠く離れた2つの電子スピンが互いに情報をやりとりする量子テレポーテーション現象が起こることを解明し、さらに特殊な顕微鏡を用いてこの現象が電気的に測定可能であることを示しました。この測定は、物質中のマヨラナ粒子の探索や、物質中のマヨラナ粒子を用いたトポロジカル量子コンピューターの実現に貢献することができます。
本研究成果は、2023年12月5日付けで、米国科学誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「量子スピン液体におけるトポロジカル準粒子の解明と直接検出」[JPMJCR19T5]、科学研究費補助金[JP20K03860、JP20H01857、JP20H05655、JP21H01039、JP22K14005、JP22H01147、JP22H01221、JP22J20066]などの助成を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(669KB)
<論文タイトル>
- “Nonlocal Spin Correlation as a Signature of Ising Anyons Trapped in Vacancies of the Kitaev Spin Liquid”
- DOI:10.1103/PhysRevLett.131.236701
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