ポイント
- ノイズのある量子コンピューターへの適用が期待されている量子誤り抑制法の原理的性能限界を明らかにした。
- 量子誤り抑制法の一般理論を導入することで、従来のケースバイケースの解析では不可能であった普遍的な性能限界の解析に初めて成功した。
- 量子誤り抑制には量子回路の深さについて指数的な時間コストが必ず必要となることを証明した。本研究の結果は、有用な量子コンピューターの実現を考える上での将来的な指針を与えるものと期待される。
東京大学 大学院総合文化研究科の高木 隆司 准教授、電気通信大学 大学院情報理工学研究科の田島 裕康 助教(兼任:科学技術振興機構(JST) さきがけ研究員)、Nanyang Technological University SingaporeのMile Gu 准教授による研究グループは、量子コンピューターにおけるノイズ効果を抑制する方法として注目されている「量子誤り抑制法」に課される普遍的な性能限界を、量子力学の原理から明らかにしました。
量子技術の実験的発展が目覚ましい今日、ノイズがある小・中規模の量子コンピューターの計算性能を理論的に特徴付けることは大きな課題となっています。本研究では、どのような量子誤り抑制法に対しても普遍的に必要となる時間コストを導出し、特に量子回路の深さに対して時間コストが指数的に増大することが原理的に避けられないことを初めて証明しました。この結果は今後の量子技術の発展の方向性の指針を与えると同時に、本研究によって導入された、ノイズのある量子系の操作的性能を情報理論の側面から明らかにする研究アプローチの将来的な発展が期待されます。
本研究成果は、2023年11月22日(米国東部時間)に米国科学誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載されます。
本研究は、科研費「若手研究(課題番号:JP19K14610(田島))」、科研費「学術変革A「極限宇宙」(課題番号:JP22H05250(田島))」、JST「さきがけ(課題番号:JPMJPR2014(田島))」、JST「ムーンショット型研究開発事業(課題番号:JPMJMS2061(田島))」による支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Universal Sampling Lower Bounds for Quantum Error Mitigation”
- DOI:10.1103/PhysRevLett.131.210602
<お問い合わせ先>
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東京大学 大学院総合文化研究科 准教授
E-mail:ryuji.takagiphys.c.u-tokyo.ac.jp田島 裕康(タジマ ヒロヤス)
電気通信大学 大学院情報理工学研究科 助教
Tel:042-443-5687
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