ポイント
- ブレビバチルス発現系と表面プラズモン共鳴法によるハイスループット相互作用解析装置を融合した、ハイスループットな抗原―抗体間相互作用解析系「BreviA(ブレビア)」を開発しました。この手法を用いて、ヒトPD-1たんぱく質に結合する抗体をもとに、マウスPD-1たんぱく質にも強く結合できるような抗体をデータ駆動的に設計しました。
- 抗体遺伝子クローニング、抗体発現、相互作用解析を多サンプル並列処理することで、解析に必要な時間・労力の大幅な削減を達成しました。
- 本解析系を用いて得られる抗体アミノ酸配列と相互作用パラメータのデータセットは、機械学習を用いた抗体設計への応用が期待されます。
東京大学 大学院工学系研究科の松長 遼 助教、津本 浩平 教授らによる研究グループは、ブレビバチルス発現系と表面プラズモン共鳴法(SPR法)によるハイスループット相互作用解析装置を融合した、ハイスループットな抗原―抗体間相互作用解析系「BreviA」を開発しました。本解析系では、抗体遺伝子クローニング、抗体遺伝子配列解析、抗体発現、相互作用解析を多サンプル並列処理(最大384サンプル)することで、解析に必要な時間・労力の大幅な削減を達成しました。
本解析系の有用性を実証するため、ヒトPD-1たんぱく質に結合する抗体をもとに、マウスPD-1たんぱく質にも強く結合できるような抗体設計に取り組みました。BreviAを用いた抗体変異体スクリーニングにより、ヒトPD-1への結合能を維持したまま、マウスPD-1への結合能を高められる変異導入領域を特定し、その領域にさらに多様な変異を導入することでマウスPD-1への結合能を100倍以上高めた抗体の設計に成功しました。BreviAでは抗体配列と相互作用パラメータからなるデータセットをハイスループットに取得できることから、機械学習を用いた抗体設計への応用が期待されます。
本研究成果は、英国時間2023年11月21日に「Scientific Reports」に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) ACT-X「特異的分子認識場のデータ駆動型設計」(課題番号:JPMJAX222I)、CREST「Antibody-Based Molecular Designに基づくウイルスの機能制御技術およびセンシング技術の開発」(課題番号:JPMJCR20H8)、文部科学省「データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト事業(課題番号:JPMXP1122714694)」の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “High-throughput analysis system of interaction kinetics for data-driven antibody design”
- DOI:10.1038/s41598-023-46756-y
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