ポイント
- 光位相器を強誘電体トランジスタで駆動する新たな手法を考案。
- 強誘電体中のメモリー効果を用いることで、光位相器の不揮発化を実証。
- シリコン光回路に強誘電体トランジスタを集積した光電融合深層学習プロセッサーへの応用が期待され、生成AIなどの高速化や省電力化を通じたカーボンニュートラルに貢献。
東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻の竹中 充 教授、唐 睿 特任助教、渡辺 耕坪 大学院生(研究当時)、トープラサートポン・カシディット 准教授、高木 信一 教授らは、JST 戦略的創造研究推進事業の支援のもと、化合物半導体薄膜をシリコン光導波路上に貼り合わせた光位相器を、強誘電体をゲート絶縁膜としたトランジスタで駆動する新たな手法を考案しました。強誘電体をメモリーとして用いることで、電源をオフにしても光位相の情報が失われない不揮発動作を光位相器に付与することに成功しました。
シリコン光回路に多数の光位相器を集積し、光回路中の光信号を自在に制御することで、さまざまな光演算が可能となることから、深層学習プロセッサーなどへの応用が期待されています。しかし、従来の光位相器は電源をオフにすると演算に必要となる情報が失われるため、常に電源をオンにしておく必要がありました。計算を必要としない待機中にも電力を消費するため、省電力化の妨げとなっていました。今回新たに不揮発光位相器の開発に成功したことで、必要なときだけ電源をオンにする光電融合プロセッサーの実現が可能となります。光位相器にメモリー機能が内蔵されることで、メモリー機能と演算機能を融合したコンピューティング方式の実現も期待されることから、生成AIなどに必要となる演算の高速化や省電力化を通じたカーボンニュートラルに大きく貢献するものと期待されます。
本研究成果は、2023年10月6日(中央ヨーロッパ夏時間)にドイツの科学雑誌「Laser & Photonics Reviews」のオンライン版にて公開されました。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST(グラント番号:JPMJCR2004およびJPMJCR20C3)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(452KB)
<論文タイトル>
- “Non-volatile hybrid optical phase shifter driven by a ferroelectric transistor”
- DOI:10.1002/lpor.202300279
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
竹中 充(タケナカ ミツル)
東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻 教授
Tel:03-5841-6786
E-mail:takenakamosfet.t.u-tokyo.ac.jp
-
<JST事業に関すること>
安藤 裕輔(アンドウ ユウスケ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3531 Fax:03-3222-2066
E-mail:crestjst.go.jp
-
<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
Tel:03-5841-0235 Fax:03-5841-0529
E-mail:kouhoupr.t.u-tokyo.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp