ポイント
- 健全な骨基質配向性(コラーゲン線維/アパタイト結晶が一方向に規則的に配列する構造)は、骨形成の早期~長期にわたり高い感染抵抗性を示すことを実証
- 骨基質配向性が、骨の力学的強度を高めているだけではなく、強力な感染抵抗能を示すことを発見
- 金属3Dプリンティングによる最適溝構造の導入は、早期には骨芽細胞配向化により大腸菌の付着を抑制、さらに長期的には抗菌たんぱく質の産生により大腸菌を溶解し、高い感染抵抗性を発揮することを発見
- 骨の形成と分解の骨再生機構に着目することで、骨基質配向と細菌感染との関連を解明した
- 骨基質配向化を誘導するインプラントデザインは、感染抵抗性という新たな機能を持つことを見いだした画期的発見
大阪大学 大学院工学研究科の松垣 あいら 准教授、大学院生の渡邊 稜太さん(博士後期課程)、中野 貴由 教授らの研究グループは、岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科の松本 卓也 教授との共同研究によって、骨内部の規則化した原子配列構造(骨基質配向性)が、細菌感染への高い抵抗性を示すことを発見しました。金属3Dプリンティングにより一方向性の最適な溝構造を導入することで、溝上で一方向にそろった骨芽細胞は生体内と類似した規則化した骨基質を生み出します。骨が力学的強度を担保するためには、こうした骨基質の配向化構造が骨密度以上に重要です。今回、中野教授らの研究グループは、金属3Dプリンティングを駆使することで微細な溝構造を作製し、骨芽細胞の培養試験により、配向化骨基質の形成が細菌感染を防止する新しい機能を持つことを発見しました。配向化した骨芽細胞は、細菌の細胞膜を溶解する抗菌ペプチドを多く産生することで抗感染特性を発揮したと考えられます。本成果により、配向化骨基質骨を誘導する骨デバイスでは、骨治癒を早期に健全化するだけでなく、インプラント埋入による術後感染の抑制やインプラント周囲炎などの感染抑制にも効果を発揮すると期待され、骨疾患の早期回復を可能にすることが期待されます。
本研究成果は、Elsevier発刊の「Biomaterials Advances」に2023年9月28日(木)(日本時間)に公開されます。
本研究は、JST-CREST「分解・劣化・安定化の精密材料科学」(研究総括:高原 淳)での「階層性自己組織化複合材料デザイン」(研究代表者:松本 卓也)(課題番号:JPMJCR22L5)の一環として行われました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Host bone microstructure for enhanced resistance to bacterial infections”
- DOI:10.1016/j.bioadv.2023.213633
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