ポイント
- 昆虫の変態を制御する遺伝子を操作して、カメムシが成虫の姿形への変化を早めたり失わせたりすることに成功
- カメムシの変態に伴って、腸内共生細菌を保持する器官が食物消化の機能も持つようになる原因、また、腸内共生細菌が卵殻の構成成分を生産してカメムシの旺盛な繁殖力を支えることを解明
- 変態や共生の機構を標的とした害虫制御法の開発に貢献が期待される
産業技術総合研究所(以下「産総研」という) 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ 森山 実 主任研究員、二橋 亮 上級主任研究員、深津 武馬 首席研究員(東京大学 大学院理学系研究科 教授(兼任))は、東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 博士後期課程(当時)の大石 紗友美 元 産総研 技術研修員、水谷 雅希 日本学術振興会 特別研究員と、腸内共生細菌が生存に必要不可欠なチャバネアオカメムシにおいて、(i)変態前の幼虫と変態後の成虫で、消化管の後端部に発達する共生器官の形態と機能が異なること、(ii)共生器官の幼虫型から成虫型への切り替えが変態制御遺伝子でコントロールされていること、(iii)幼虫型の共生器官は腸内共生細菌の保持に特化しているのに対して、成虫型の共生器官はそれに加えて食物の消化吸収を行うようになること、(iv)成虫の腸内共生細菌は卵殻形成に必要なアミノ酸を多量に合成するようになること、(v)これら変態に伴うカメムシ自身と腸内共生細菌それぞれの変化が、多量の食物を摂取して数日ごとに卵塊を産むカメムシ成虫の旺盛な繁殖力を支えていることを解明しました。
本研究により、昆虫類の多様性と繁栄を支える要因の1つである変態が、昆虫自身のみならず、腸内共生細菌の機能も制御していることが判明しました。共生関係にある異種生物間の高度な機能的統合を明らかにした重要な成果であり、変態や共生の機構を標的とした害虫制御法の開発に寄与する可能性もあります。
本研究成果の詳細は、2023年9月25日の週(米国東部時間時間)に米国の学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」(米国科学アカデミー紀要)にオンライン掲載されます。
本研究開発は、科学技術振興機構「ERATO 深津共生進化機構プロジェクト」および科研費(新学術領域研究など)による支援を受けて実施しました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.79MB)
<論文タイトル>
- “Regulation and remodeling of microbial symbiosis in insect metamorphosis”
- DOI:10.1073/pnas.2304879120
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
森山 実(モリヤマ ミノル)
産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ 主任研究員
〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6
Tel:029-861-6812
E-mail:m-moriyamaaist.go.jp
二橋 亮(フタハシ リョウ)
産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ 上級主任研究員
〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6
Tel:029-861-6128
E-mail:ryo-futahashiaist.go.jp
深津 武馬(フカツ タケマ)
産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ 首席研究員
東京大学 大学院理学系研究科 教授(兼任)
〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6
Tel:029-861-6087
E-mail:t-fukatsuaist.go.jp
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<JST事業に関すること>
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