京都大学 白眉センター・大学院工学研究科 中村 秀樹 特定准教授らは、生きた細胞内部の構造体に力をかけて「押す」ツール「ActuAtor(アクチュエーター)」を開発しました。細胞が外からの力に応答することは知られていましたが、細胞の中で働く力の役割は不明でした。特に、従来の技術は細胞表面に力をかけることはできても、細胞内部の標的には適用できないという問題があり、生きた細胞内部の標的に力をかける技術が求められていました。同グループは、細胞に侵入し細胞内の力発生装置に「押してもらう」ことで動き回るバクテリアをヒントにActuAtorを開発しました。本技術は、細胞内の力発生装置であるアクチンに標的を「押してもらう」ことで働きます。力をかける場所やタイミングは、薬剤や光で自由に操作できます。本研究では、ActuAtorが細胞内部のさまざまな構造体を変形・運動させることを示し、ミトコンドリアの形態そのものはその機能に大きく影響しないことを明らかにしました。本成果は、細胞内の動的構造体の機能解明や、神経変性疾患の理解・治療につながると期待されます。
本成果は、2023年9月20日(米国東部時間)に米国の国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されます。
本プロジェクトは、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 個人型研究 さきがけ「細胞の動的高次構造体」(研究課題名:解糖系高次構造体の時空間操作技術によるグルコース代謝制御の解明)JPMJPR21EB、文部科学省科学研究費補助金 学術変革領域(B)「動的溶液環境が制御する生体内自己凝縮過程の統合的理解」計画研究(研究課題名:合成生物学技術による生きた細胞内での自己凝縮過程評価系の構築)JP22H05087、JP22H05091、文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「発動分子科学」公募研究(研究課題名:細胞内タンパク質分子集団の自己組織化による結晶マイクロマシンの発動)JP21H00397、公益財団法人 持田記念医学薬学振興財団 研究助成、HFSP Research Grant、米国 National Institute for Health、DoD DARPA、AFOSR MURIの支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “ActuAtor, a Listeria-inspired molecular tool for physical manipulation of intracellular organizations through de novo actin polymerization”
- DOI:10.1016/j.celrep.2023.113089
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