ポイント
- インフラマソーム構成分子の1つであるNLRP1(NLR family pyrin domain containing1)は、近年自己炎症性疾患に関連することから注目されているが、クライオ電子顕微鏡構造解析により、全ての生物に共通して見られるチオレドキシン(TRX)がNLRP1の新たな結合因子であることを発見した。
- 酸化還元活性を持つTRXのシステインがNLRP1への結合に重要な役割を果たしており、TRXがNLRP1インフラマソームの活性化を抑制することを明らかにした。
- 本研究によって得られた構造的知見は、NLRP1が関与する自己炎症性疾患などの新規治療薬開発に大きく貢献することが期待される。
東京大学 大学院薬学系研究科の張 志寛 助教、藤村 亜紀子 特任研究員、大戸 梅治 准教授、清水 敏之 教授、同大学 医科学研究所の柴田 琢磨 准教授、三宅 健介 教授、順天堂大学 大学院医学研究科 アトピー疾患研究センターの北浦 次郎 教授らの共同研究チームは、クライオ電子顕微鏡単粒子解析を通して、NLRP1インフラマソーム活性化の新たな抑制因子としてチオレドキシン(TRX)を同定し、さらにNLRP1とTRXとの複合体の構造を解明しました。生体の酸化還元状態の制御に重要な働きを示すTRXが直接結合することによって自然免疫応答を制御することは、酸化還元状態と自然免疫との関連性が重要であることを意味します。ここで得られた構造知見はNLRP1が関与する疾患をターゲットとする治療薬の開発にも大きく貢献することが期待されます。
本研究成果は、英国夏時間2023年9月13日付で「Nature」に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST)「細胞内現象の時空間ダイナミクス」研究領域 研究課題名「Toll様受容体の応答を決定する時空間リソソームダイナミクス」(課題番号:JPMJCR21E4 研究代表者:清水 敏之)を始め、文部科学省 科学研究費補助金(課題番号22K15046、20K15730、22H02556、23K18211、23H00366)、AMED 創薬等先端技術支援プラットフォーム(BINDS)などの外部資金支援を受けて行われたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(392KB)
<論文タイトル>
- “Structural basis for thioredoxin-mediated suppression of NLRP1 inflammasome”
- DOI:10.1038/s41586-023-06532-4
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