ポイント
- 磁気スキルミオン(以下スキルミオン)はナノメートルサイズの磁石(スピン)が作る粒子で、次世代の超高密度メモリーのビットとして利用できることから世界的に研究が進んでいます。このスキルミオンが光の偏光面をねじる「トポロジカル磁気光学カー効果」の観測に初めて成功しました。
- 今回の観測でトポロジカル磁気光学効果が広い周波数帯の光で生じることが明らかになり、レーザーフォトニクスを利用しスキルミオンが検出できることを示しました。
- 将来的には光を使った高速かつ非接触なスキルミオン読み取りへの応用が期待できます。
東京大学 大学院工学系研究科の加藤 喜大 大学院生、岡村 嘉大 助教、マクシミリアン ヒルシュベルガー 准教授、高橋 陽太郎 准教授、理化学研究所 創発物性科学研究センターの十倉 好紀 センター長らの研究グループは、次世代メモリーの候補として世界的な研究が進められているスキルミオンが光の偏光面をねじる「トポロジカル磁気光学カー効果」の観測に初めて成功しました。
スキルミオンはナノメートルサイズのスピンの渦構造を持ち、1つの渦が粒子としての性質を持っています。スキルミオン粒子は1ビットとして機能し、高密度かつ外乱などによって壊れにくいことから次世代のメモリーデバイスへの応用が期待されています。これまでの研究は、スキルミオンを発現する物質やデバイスの開発、スキルミオンの電流駆動が中心でした。しかし、スキルミオンの読み取りの手法は極めて限定されており、高速かつ簡易な読み取り手法の開拓が不可欠です。本研究では、磁性体に照射した光の偏光面が回転する磁気光学カー効果に着目しました。スキルミオンは創発磁場と呼ばれる仮想的な磁場を持つため、それに由来した磁気光学カー効果を示す可能性があります。高密度のスキルミオンを持つGd2PdSi3において磁気光学カー効果の測定を行ったところ、赤外領域でスキルミオンの創発磁場に由来した「トポロジカル磁気光学カー効果」を観測しました。本研究成果は、スキルミオンに新しい光学機能性を与えるものであり、将来的にはレーザーフォトニクスと融合したスキルミオンデバイスの実現につながる可能性があります。
本研究成果は、2023年9月5日(英国夏時間)に英国科学雑誌「Nature Communications」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR212X)、科研費「基盤研究B(課題番号:21H01796)」、「新学術領域研究(研究領域提案型)(課題番号:22H04470)」の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(333KB)
<論文タイトル>
- “Topological magneto-optical effect from skyrmion lattice”
- DOI:10.1038/s41467-023-41203-y
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