筑波大学,科学技術振興機構(JST)

令和5年8月22日

筑波大学
科学技術振興機構(JST)

油分解細菌の集団は表面積を広げて油分解効率を高める

実環境中において、多くの細菌はバイオフィルムと呼ばれる集団を形成して生存しています。ある種の海洋細菌は、海洋に流出した石油などの油の周囲にバイオフィルムを形成し、これを栄養源とし、生分解します。しかし、バイオフィルムの形成と油の分解との関連は解明されていませんでした。

本研究では、マイクロ流体デバイスを用いた観察系を構築し、細菌の細胞と微小な油滴との相互作用を高解像度で可視化しました。その結果、油分解細菌の一種であるAlcanivorax borkumensisが、油と水の界面に強く付着し、生育に伴って油滴の形状を樹状突起のように変形させ、表面積を広げることによって、より多くの細胞が油に直接、接触できるようになり、効率よく油を分解できることが分かりました。また、理論物理モデルを用いて、バイオフィルムの形成とその形状のダイナミクスを予測することに成功しました。

さらに、この油滴の形状変化は、細胞が野菊の花びらのように配置している中心から始まることが分かりました。このような油滴表面での特徴的な細胞の配置パターンは、液晶のネマチック相の分子配列(分子は一方向に配向するが、重心はランダム)に類似しています。すなわち、細菌はバイオフィルムを形成し、互いに協力して、細胞の成長に伴う圧力を利用することで、野菊の花びら状の中心が隆起し、油界面の突起形成を引き起こして、効率的に油を分解していることが示されました。

本研究の成果は、細菌を用いた環境浄化技術(バイオレメディエーション)の効率化に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2023年8月18日(現地時間)に「Science」に掲載されました。

本研究は、科研費(38559WJ、21H01720)とJST ERATO(JPMJER1502)による研究プロジェクトの一環として実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Alcanivorax borkumensis Biofilms Enhance Oil Degradation By Interfacial Tubulation”
DOI:10.1126/science.adf3345

<お問い合わせ先>

(英文)“Efficient Oil-Eating Bacteria Cooperate to Maximize Dining Capacity”

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