東北大学,科学技術振興機構(JST)

令和5年8月21日

東北大学
科学技術振興機構(JST)

脂肪燃焼を促進する人工受容体の開発

~細胞の情報伝達に立脚した創薬手法論の開拓へ~

ポイント

現在市販されている医薬品のうち、最も多くの種類を占めるのがGたんぱく質共役型受容体(GPCR)と呼ばれる膜表面センサーたんぱく質(細胞外の分子情報を細胞内に伝える機能を持つ)に作用するタイプの薬です。これらGPCR作用薬のほとんどは、3種類のGたんぱく質シグナル伝達経路(Gs、Gi、Gq)のいずれかの機能を正常化することで薬効を発揮します。これらとは別に、G12と呼ばれるシグナル伝達経路が存在しますが、G12シグナルが薬効に寄与するかどうか不明でした。

東北大学 大学院薬学研究科の井上 飛鳥 教授らの研究グループは、G12シグナルを誘導できるデザイナーGPCRを開発しました。このデザイナーGPCRを脂肪細胞に発現する遺伝子組換えマウスを用いることで、通常はエネルギーを貯蓄するタイプの脂肪細胞(白色脂肪)からエネルギーを消費するタイプの脂肪細胞(褐色脂肪)への転換をG12シグナルが促進することが分かりました。

GPCRの中にはG12シグナルをオンにするタイプが存在します。脂肪細胞に発現するこれらGPCRの作動薬を開発することで、脂肪を「燃やす」肥満治療薬となることが期待されます。また、この遺伝子改変マウスを利用すると、デザイナーGPCRを別の調べたい組織に発現させることが可能であり、さまざまな疾患に対するG12シグナルの効果を検証することが可能となります。

本研究成果は、2023年8月21日に、科学雑誌「Signal Transduction and Targeted Therapy」に掲載されます。

本研究は、「文部科学省 科学研究費補助金(課題番号:JP21H04791)」、「科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR215T)」を始めとするさまざまな研究費支援を受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Chemogenetic activation of G12 signaling enhances adipose tissue browning”
DOI:10.1038/s41392-023-01524-2

<お問い合わせ先>

(英文)“Chemogenetic activation of G12 signaling enhances adipose tissue browning”

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