ポイント
- 光を用いて大規模な組合せ最適化問題を解く空間光イジングマシンの新しい計算モデルを提案
- これまで空間光イジングマシンには扱える問題に制約があったが、新しい計算モデルにより適用範囲が飛躍的に拡大し、実問題への応用に道筋が示された
- 空間光イジングマシンの実応用が進展することにより、組合せ最適化計算の高速・高効率化だけでなく、社会課題への応用を通してカーボンニュートラル実現などへの貢献も期待される
大阪大学 大学院情報科学研究科の鈴木 秀幸 教授および谷田 純 教授らの研究グループは、光を用いて組合せ最適化問題を解く空間光イジングマシンの適用範囲を飛躍的に拡大する、新しい計算モデルを提案しました。
空間光イジングマシンは、光の並列性を活用することにより1万変数以上の大規模な組合せ最適化問題を高速・高効率に扱うことができるという優れた特徴を持ちます。しかし、これまでは扱える問題に厳しい制約があり、実問題への応用において大きな課題となっていました。
今回、研究グループは、この課題を解決し、空間光イジングマシンが扱える組合せ最適化問題の範囲を飛躍的に拡大する計算モデルを提案しました。この計算モデルを用いると、光の特性により大規模で全結合のイジング問題が効率的に扱えるだけでなく、特に低ランク性を持つ問題に対して高効率であるという独自の特徴を持つことが明らかになりました。また、この計算モデルが組合せ最適化だけでなく統計的学習にも適用できることを示しました。これらの研究成果は、大規模な組合せ最適化と統計的学習の実問題を解く新しい光計算技術の実現に道筋を付けるものであり、計算の高速・高効率化だけでなく、社会課題への応用を通してエネルギー利用の効率化やカーボンニュートラル実現への貢献なども期待されます。
本研究成果は、米国物理学会の速報論文誌「Physical Review Letters」に2023年8月7日(月)(米国東部時間)に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「Society 5.0を支える革新的コンピューティング技術」研究領域(研究総括:坂井 修一)における研究課題「光ニューラルネットワークの時空間ダイナミクスに基づく計算基盤技術」(研究代表者:鈴木 秀幸、課題番号:JPMJCR18K2)などの一環として行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(629KB)
<論文タイトル>
- “Low-rank combinatorial optimization and statistical learning by spatial photonic Ising machine”
- DOI:10.1103/PhysRevLett.131.063801
<お問い合わせ先>
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鈴木 秀幸(スズキ ヒデユキ)
大阪大学 大学院情報科学研究科 教授
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