東海国立大学機構 名古屋大学,科学技術振興機構(JST)

令和5年8月7日

東海国立大学機構 名古屋大学
科学技術振興機構(JST)

マイクロバブル造影超音波画像で
近赤外光線免疫療法の治療効果を予測

~新規概念を確立し、バイオマーカーで簡便にその場推定が可能に~

ポイント

名古屋大学 大学院医学系研究科・最先端イメージング分析センター/B3ユニットフロンティア長・高等研究院(JST 創発的研究支援事業 1期生)の佐藤 和秀 特任講師(最終責任著者、共同筆頭著者)、同大学 大学院医学系研究科 総合保健学専攻 オミックス医療科学の松岡 耕平 大学院生(第一著者)、佐藤 光夫 教授らの研究グループは、手術・放射線・化学療法・がん免疫療法に続く“第5のがん治療”といわれる近赤外光線免疫療法の効果を予測する新たな画像評価技術開発に成功しました。

近年、光を用いた医療技術開発が次世代の新規治療方法として脚光を浴びています。その中でも、2011年に米国立がんセンター(NCI/NIH)の小林 久隆 博士らにより報告された新しいがん治療法である近赤外光線免疫療法(Near Infrared Photoimmunotherapy;NIR-PIT)は新規の治療法として注目されています。この治療法は、これまでと異なる方法でがん細胞を標的破壊できることから、手術・放射線・化学療法・がん免疫療法につづく、“第5のがん治療”として期待されており、世界に先駆けて日本で2020年9月にEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)を高発現する再発既治療頭頸部がんに対して、承認を受けて保険適用されています。

近赤外線免疫療法では、光を照射する必要性があり、現状は十分量と考えられる光量を設定して光照射をしていますが、光は組織内で反射や散乱により減衰してしまい均一な照射が困難なため、光照射の完遂を適切に判断できる指標が求められていました。そこで、本研究グループは、近赤外光線免疫療法で治療した腫瘍でEPR効果が高まることに着目し、治療後に血管周囲のスペースが光細胞死によって拡大することでマイクロサイズの粒子をも滞留することを新規に発見して、その機序解明と滞留する粒子サイズの上限を明らかにしました。

また、[マイクロサイズ超EPR効果]の医療応用として超音波画像検査機器とそのマイクロバブル造影剤を使用し、光照射の後に本技術を用いて治療効果を予測し、不十分であれば追加照射を柔軟に行うなどの画像マーカーとして利用できると考えました。超音波画像検査機器はほとんどの病院で既に導入されており、本研究で使用したマイクロバブル造影剤は検査診断薬として既に病院で認可使用されていることから、臨床応用の可能性が高まると考えられます。

本研究は、学術出版社「Cell Press」と「The Lancet」から共同発行されている医学医療科学総合誌「EBio Medicine」(2023年8月7日付電子版:日本時間)に掲載されます。

本研究は、文部科学省 科学技術人材育成費補助事業「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業:若手研究者スタートアップ研究費」、文部科学省 研究大学強化促進事業、日本学術振興会 科研費(18K15923、21K07217)、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR2017)、第8回 野口 遵賞(野口研究所)、などのサポートを受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Contrast-enhanced ultrasound imaging for monitoring the efficacy of near-infrared photoimmunotherapy”
DOI:10.1016/j.ebiom.2023.104737

<お問い合わせ先>

(英文)“Development of Image-based Biomarker for Treatment Confirmation of Near-Infrared Photoimmunotherapy Using Microbubble Contrast-Assisted Ultrasound Images”

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