信州大学,科学技術振興機構(JST),岡山大学

令和5年7月26日

信州大学
科学技術振興機構(JST)
岡山大学

対カチオン制御によって温度応答性酸化グラフェンを開発

~機能性ソフトマテリアルの設計に新たな指針を提示~

信州大学 学術研究院 繊維学系の佐野 航季 助教(科学技術振興機構 さきがけ研究者)と信州大学 総合理工学研究科 繊維学専攻の近藤 翔麻 大学院生(修士課程1年)らの共同研究グループは、酸化グラフェン(GO)ナノシートの表面に存在する負電荷と対になる陽イオン(対(たい)カチオン)の種類を制御することによって、温度応答性高分子を利用することなく温度応答性GOナノシートを開発することに成功しました。

温度応答性GOナノシートはさまざまな機能性ソフトマテリアルを作製するための基盤となる物質として利用されますが、GOナノシートに温度応答性を付与するためには温度応答性高分子の利用が必要不可欠でした。今回、共同研究グループは、GOナノシート表面に存在するカルボキシ基などの酸性官能基の対カチオンを自在に制御する簡便な方法を確立し、さまざまな対カチオンにおける温度応答挙動を精査したところ、特定の対カチオンを持つGOナノシートが温度応答性を示すことを見いだしました。得られた温度応答性GOナノシートの水分散液は、温度に応答してGOナノシートが自己集合/解離することで可逆的なゾル-ゲル転移を示すことが明らかになりました。さらに、この水分散液をインクとして利用することで、3次元形状がデザイン可能なハイドロゲルを作製することにも成功しました。本戦略は機能性ソフトマテリアルの新たな設計指針として広く用いられることが期待されます。

本研究成果は、2023年7月24日(現地時間)に米国化学会の学術誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載され、同誌のSupplementary Coverにも選ばれました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR20A6)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金(JP22H02057、JP22H04548)などの支援を受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Countercation Engineering of Graphene-Oxide Nanosheets for Imparting a Thermoresponsive Ability”
DOI:10.1021/acsami.3c07820

<お問い合わせ先>

(英文)“Countercation Engineering" for Thermoresponsive Graphene-Oxide Nanosheets”

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