鳥取大学,東京薬科大学,科学技術振興機構(JST)

令和5年7月18日

鳥取大学
東京薬科大学
科学技術振興機構(JST)

染色体導入効率を飛躍的に改善する技術を開発

~ヒト/マウス人工染色体を用いたゲノム合成研究・再生医療研究を加速~

ポイント

鳥取大学の香月 康宏 教授、東京薬科大学の宇野 愛海 助教らの研究グループは、ヒトおよびマウス人工染色体による疾患モデル細胞・動物作製、再生・細胞医薬品の開発を目指しています。しかし、ヒトiPS細胞を始め哺乳類細胞へヒト/マウス人工染色体を導入する効率は不十分でした。本研究で、ヒト/マウス人工染色体を保有するCHO細胞をタキソールとリバーシンという2種類の化合物を混合して用いることにより、導入効率を飛躍的に上昇させることに成功しました。

微小核細胞融合(Microcell-mediated chromosome transfer:MMCT)法は、ヒト/マウス人工染色体を持つ染色体供与細胞への微小核誘導、微小核細胞の分取、そして微小核細胞と染色体受容細胞の融合という3つのステップで行われます。これまでの基礎研究から得た知見を基に、最初の供与細胞に微小核を誘導するステップに着目しました。従来のコルセミドから、タキソールとリバーシンを組み合わせた新規の処理方法に変更することで、飛躍的に微小核形成効率が向上することを明らかにしました。微小核の誘導効率が上昇した結果、染色体導入効率も上昇し、ヒトiPS細胞を含めたさまざまな細胞にヒト/マウス人工染色体を導入する効率が従来法と比較して約5~18倍程度改善することを示しました。

本研究で開発した染色体導入効率を飛躍的に改善する技術は、合成DNAを搭載したヒト/マウス人工染色体を用いたゲノム合成研究や、複数の治療遺伝子を細胞に届ける再生・細胞医薬用ベクター技術の開発を大きく加速させるものと期待されています。

本研究成果は、2023年7月14日(米国東部時間)に米国遺伝子細胞治療学会(American Society of Gene&Cell Therapy:ACGCT)の機関誌の1つである国際科学誌「Molecular Therapy-Nucleic Acids」のオンライン版で公開されました。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

「ゲノムスケールのDNA設計・合成による細胞制御技術の創出」
(研究総括:塩見 春彦 慶應義塾大学 医学部 教授)
「ヒト/マウス人工染色体を用いたゲノムライティングと応用」
香月 康宏(鳥取大学 医学部 生命科学科/染色体工学研究センター 教授)
平成30年10月~令和6年3月

また日本医療研究開発機構(AMED) 再生医療実現拠点ネットワークプログラム「次世代型ヒト人工染色体ベクターによるCAR交換型高機能再生T細胞治療の開発拠点」、革新的先端研究開発支援事業「免疫系ヒト化動物を活用した抗感染症ヒト抗体創生基盤の確立」、および生命科学・創薬研究支援基盤事業「染色体工学技術を用いたヒト化モデル動物・細胞による創薬支援」などの支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Co-treatment of CHO cells with Taxol and reversine improves micronucleation and microcell-mediated chromosome transfer efficiency”
DOI:10.1016/j.omtn.2023.07.002

<お問い合わせ先>

(英文)“Treatment of CHO cells with Taxol and reversine improves micronucleation and microcell-mediated chromosome transfer efficiency”

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