東海国立大学機構 名古屋大学,東京工業大学,北海道大学,国立がん研究センター,慶應義塾大学,東京医科大学,科学技術振興機構(JST)

令和5年7月8日

東海国立大学機構 名古屋大学
東京工業大学
北海道大学
国立がん研究センター
慶應義塾大学
東京医科大学
科学技術振興機構(JST)

卵巣がんに対する新しいバイオマーカーとして期待

~ポリケトン鎖修飾ナノワイヤを用いた新たなエクソソーム捕捉法を開発~

ポイント

名古屋大学 医学部附属病院 産科婦人科(同大学 高等研究院兼務)の横井 暁 病院講師、名古屋大学 大学院医学系研究科 産婦人科学の鵜飼 真由 医師[現 トヨタ記念病院 産婦人科医長]、梶山 広明 教授、東京工業大学 生命理工学院の安井 隆雄 教授、北海道大学 大学院工学研究院(同大学 創成研究機構 化学反応創成研究拠点 WPI-ICReDD)の猪熊 泰英 教授、国立がん研究センター 研究所 病態情報学ユニットの山本 雄介 ユニット長、慶應義塾大学 薬学部薬物治療学講座の松崎 潤太郎 准教授、東京医科大学 医学総合研究所の落谷 孝広 特任教授らの研究グループは、卵巣がんエクソソームにおける特異的な膜たんぱく質を網羅的プロテオミクスにより新しく同定し、かつ、エクソソーム分離方法としてポリケトン鎖修飾ナノワイヤを開発しました。これらの結果は、卵巣がんの診断や治療経過予測に関する新しいバイオマーカーとして期待されます。

エクソソームを含む細胞外小胞(EV)は、ヒトのあらゆる体液中に存在し、細胞間コミュニケーションに不可欠なツールとして注目されています。また、疾患に応じて搭載する分子に変化が生じるため、有望な疾患バイオマーカーとして期待されています。EVにおいて、表面に存在する膜たんぱく質は、特定のEVを検出するのに、またそれ自体がバイオマーカーとして利用できるため極めて重要ですが、卵巣がんにおける特異的なEV膜たんぱく質は分かっておらず、大きな課題となっていました。卵巣がんは予後の悪い女性生殖器悪性腫瘍であり、世界の女性のがん死亡原因の主要な1つとなっています。卵巣がんは早期発見が極めて困難ながんの1つであり、高精度高感度なバイオマーカーの開発が急務となっていました。本研究では、卵巣がんにおけるEVを対象に、詳細なたんぱく質量解析を行うことで、卵巣がんEV関連膜たんぱく質である、FRα、Claudin-3、TACSTD2を同定しました。また、EVを捕捉する手段の1つであるナノワイヤを応用し、ナノワイヤをポリケトン鎖修飾することでEV結合性を高め、より純度の高いEVを捕捉することを可能にしました。これらの知見を組み合わせた方法を用いることで、卵巣がん患者におけるEVを利用した新しい検出方法を開発しました。これらの研究結果は、卵巣がんに対する新しいバイオマーカーとして期待されます。

本研究成果は、学術雑誌「Science Advances」の電子版(2023年7月7日付)に掲載されます。

本研究は主に、科学技術振興機構(JST)の創発的研究支援事業:研究課題名『がん細胞外小胞の臨床応用へ向けた基盤技術開発研究』(JPMJFR204J)、『「中分子ひも」を鍵とする巨大機能性分子の創成』(JPMJFR211H)、戦略的創造研究推進事業さきがけ 『細胞外小胞の網羅的捕捉と機械的解析によるmiRNA分泌経路の解明』(JPMJPR19H9)、および日本医療研究開発機構(AMED)の革新的がん医療実用化研究事業:研究課題名『卵巣がんゲノム搭載細胞外小胞による新規リキッドバイオプシー戦略』の支援を受け行ったものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Identifying high-grade serous ovarian carcinoma-specific extracellular vesicles by polyketone-coated nanowires”
DOI:10.1126/sciadv.ade6958

<お問い合わせ先>

(英文)“Previously unidentified proteins suggest new way to diagnose ovarian cancer”

前に戻る