物質・材料研究機構(NIMS),科学技術振興機構(JST)

令和5年6月14日

物質・材料研究機構(NIMS)
科学技術振興機構(JST)

再生可能な接着剤、光で制御

~水中でのリモート接着作業も可能に~

1.物質・材料研究機構(NIMS)は、接着と剥離を何度でも繰り返すことができ、かつ、必要な時には基材と接着剤を元の状態にリセットできる、再生可能な接着剤を開発しました。

2.環境への配慮と経済成長の両立への意識の高まりの中、複数部材からなる成形加工品を原材料に分離・回収する技術が求められています。その中で、使用時には十分な接着力を発揮し、役目が終わると容易に剥離することができる新たな接着方法が注目されています。そもそも接着と剥離は、矛盾する要素が含まれていることから、強力な接着力と容易な剥離を両立することは困難でした。また、解体できたとしても、基材に接着剤が残ったり、基材が壊れたりすることもあり、マテリアル循環を妨げる要因になっていました。

3.今回、研究チームは、波長の異なる紫外線を照射することで架橋・脱架橋反応を可逆的に引き起こすカフェ酸に注目しました。カフェ酸を組み込んだ高分子を基材に塗布したのちに、波長365ナノメートルの紫外線を当てると、架橋反応によって不溶化した塗膜となります。この塗膜は室温で保存している状態では接着性を示さないのですが、加熱することで接着と剥離を何度でも繰り返すことができます。さらに、使用期間が終わった際には、波長254ナノメートルの紫外線を照射することで、架橋した部分が開裂し、塗布前と同じ状態にリセットされることで、接着剤と基板の両方を回収、再利用できるようになります。また、カフェ酸の化学構造に含まれるカテコール基は、付着生物であるムラサキイガイが分泌する接着成分にも多く含まれており、フッ素樹脂や水中での接着など、一般的な接着剤が苦手とする基材や使用環境においても、強力な接着力とリサイクル性を発揮しました。

4.今後は、マテリアル循環を指向したものづくりに貢献する接着剤として、電子機器や輸送機器、医療機器、インフラ補修などさまざまな用途に展開していきます。

5.本研究は、物質・材料研究機構 高分子・バイオ材料研究センター 内藤 昌信 分野長、Wang Siqian NIMS ポスドク研究員らの研究チームによって行われました。

6.本研究成果は、「Advanced Functional Materials」誌に2023年6月13日(日本時間)に掲載予定です。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST研究領域「実験と理論・計算・データ科学を融合した材料開発の革新(課題番号:JPMJCR19J3)」の一環として、行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Bio-inspired Adhesive with Reset-On Demand, Reuse-Many (RORM) Modes”
DOI:10.1002/adfm.202215064

<お問い合わせ先>

(英文)“Recyclable Photoreactive Adhesive”

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