九州大学,科学技術振興機構(JST)

令和5年6月2日

九州大学
科学技術振興機構(JST)

透過電子顕微鏡によるナノ粒子焼結を4次元で初計測

~ものづくりのDX化促進による開発コストの削減に期待~

ポイント

粒子を加熱すると融点よりも低い温度で粒子同士が結合する現象は焼結と呼ばれ、私たちの身の回りでは陶器を始めとして幅広い製品に利用されています。最先端のものづくりの現場では、例えばナノメートルサイズまで細かくした銅粒子を電子回路基板上に塗布して焼結することで、薄型・軽量な電子回路をつくることが可能となっています。このようにナノ粒子はわれわれが目にするようなマイクロ~ミリメートルの粒子よりも低温で焼結し、少量でも機能を発揮することから、省資源、低コスト、低環境負荷という、これからのものづくりへの要求を満たせる材料として注目されています。ナノ材料には通常の材料には無い性能や性質が見込まれることから、こうした材料に対する解析技術を確立することは、さらなる技術革新の種を見つけることにつながります。

今回、九州大学 先導物質化学研究所の井原 史朗 助教、斉藤 光 准教授、村山 光宏 教授、ならびに同大学 大学院総合理工学府の義永 瑞雲 氏(修士課程修了、現在 株式会社凸版印刷勤務)、和田 皓太 氏(修士課程在学)、同 大学院総合理工学研究院の波多 聰 教授、株式会社メルビルの宮崎 裕也 氏らの研究グループは、試料を大気にさらすことなく透過電子顕微鏡(TEM)に輸送可能な加熱その場観察用のTEM試料ホルダーを開発し、平均粒径が150ナノメートルの銅ナノ粒子が焼結する過程を3次元で捉えることに成功しました。

さらには、観察中に照射する電子線量を、これまでに報告されている3次元観察の中でも最低レベルまで落とすことで、電子線照射による試料の汚染を回避しました。電子線量を低下させると画像に含まれるノイズが顕著となりますが、ノイズフィルターの適用から3次元可視化まで一連の画像処理を独自に組み合わせることで、銅ナノ粒子の焼結による経時形態変化の3次元可視化、すなわち、3次元空間に時間変化も加えた4次元計測を達成しました。

ナノ粒子の焼結過程のナノレベル4次元計測は本研究で初めて達成された成果であり、日本時間2023年6月2日(金)に「Nanoscale」誌に公開されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR1994、JPMJCR18J4)、科学研究費補助金(JP18H05479、JP20H02426、JP20K21093、JP21K20491、JP22K14466)の支援を受け、また、米国NSF-NNCI Virginia Tech centerとの共同研究(ECCS 2025151)で実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“In-situ electron tomography for thermally activated solid reaction of anaerobic nanoparticles”
DOI:10.1039/D3NR00992K

<お問い合わせ先>

(英文)“In situ electron tomography for the thermally activated solid reaction of anaerobic nanoparticles”

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