ポイント
- 高度に発達した目を持つハコクラゲは、原始的な無脊椎動物(刺胞動物)であるにもかかわらず、目の中で光受容機能を担うたんぱく質(クラゲロドプシン)が、哺乳(ほにゅう)類などの脊椎動物とよく似た光反応特性を示すことが明らかになりました。
- クラゲロドプシンが示す、脊椎動物ロドプシンと類似の光反応特性は、光吸収・反応機能に重要なアミノ酸残基の特異な位置によるものであることを、赤外分光とAIを活用した構造解析から明らかにしました。
- ヒトを含めた動物に視覚機能をもたらす、最初の機能性たんぱく質であるロドプシンの進化の謎に迫る新たな知見を得ました。
- クラゲロドプシンを新規光遺伝学ツールとして応用するための分子基盤の理解を促進することが期待されます。
名古屋工業大学 大学院工学研究科の犬飼 紫乃 氏(工学専攻生命・応用化学系プログラム 博士前期課程2年)、片山 耕大 准教授、神取 秀樹 特別教授、大阪公立大学 大学院理学研究科の寺北 明久 教授、小柳 光正 教授らの研究グループは、高度に発達した目を持つハコクラゲが、進化の過程でロドプシン(クラゲロドプシン)中の特異な位置にカウンターイオンを移動させた結果、脊椎動物ロドプシンとよく似た光反応特性を示すようになったことを明らかにしました。そして、カウンターイオンの位置が異なる3種(クラゲ:原始的な無脊椎動物(刺胞動物)、ウシ:脊椎動物、イカ:発達した無脊椎動物(軟体動物))のロドプシンで比較解析を行うことにより、クラゲロドプシンがたどった分子進化を裏付ける構造変化情報を取得することに成功しました。
本研究成果は、2023年5月24日に米国科学誌「The Journal of Biological Chemistry」誌に掲載されました。
本研究成果は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「量子技術を適用した生命科学基盤の創出」研究領域 研究課題名「構造基盤に立脚した色認識機構および色覚情報伝達機構の解明」(JPMJPR19G4)令和元年度採択(研究者:片山 耕大)、CREST「光の特性を活用した生命機能の時空間制御技術の開発と応用」領域(JPMJCR1753、研究課題名:細胞内二次メッセンジャーの光操作開発と応用、研究代表者:神取 秀樹)および科学研究費補助金(特別推進研究、新学術領域研究など)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(809KB)
<論文タイトル>
- “Investigating the Mechanism of Photoisomerization in Jellyfish Rhodopsin with the Counterion at an Atypical Position”
- DOI:10.1016/j.jbc.2023.104726
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
片山 耕大(カタヤマ コウタ)
名古屋工業大学 大学院工学研究科 工学専攻(生命・応用化学領域) 准教授
Tel:052-735-5218
E-mail:katayama.kotanitech.ac.jp
神取 秀樹(カンドリ ヒデキ)
名古屋工業大学 大学院工学研究科 工学専攻(生命・応用化学領域) 特別教授
Tel:052-735-5207
E-mail:kandorinitech.ac.jp
寺北 明久(テラキタ アキヒサ)
大阪公立大学 大学院理学研究科 教授
Tel:06-6605-3144
E-mail:terakitaomu.ac.jp
小柳 光正(コヤナギ ミツマサ)
大阪公立大学 大学院理学研究科 教授
Tel:06-6605-2583
E-mail:koyanagiomu.ac.jp
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