ポイント
- 難治性不妊症である着床不全の仕組みを明らかにしました。
- ヒストンH3K27のトリメチル化(抑制的ヒストン修飾)を介したエピゲノムによる調節が子宮内膜の細胞分化と胚浸潤に重要であることを示しました。
- 着床不全の新たな診断法開発へ向けた臨床研究への展開が期待されています。
東京大学 医学部附属病院 女性診療科・産科の藍川 志津 特任研究員、東京大学 大学院医学系研究科 産婦人科学講座の福井 大和 大学院生(医学博士課程:研究当時)、廣田 泰 准教授、大須賀 穣 教授らは、ヒト着床期子宮内膜や遺伝子改変マウスを用いた研究から、抑制的ヒストン修飾を介したエピゲノムの調節によって、子宮内膜に適切な細胞分化と正常な胚浸潤が起こることを世界で初めて明らかにしました。
不妊症は、全世界のカップルの15パーセントが直面する健康問題です。生殖医療において体外受精・胚移植の技術進歩は目覚ましく、日本では全出生児の14人に1人が体外受精・胚移植によって誕生しています。その一方で、良好胚を選別し移植しているにもかかわらず着床が成立しない着床不全が生殖医療最大の課題となっているものの、診断・治療法が確立していないのが現状です。本研究により難治性不妊症である着床不全の起こる仕組みが明らかになり、着床不全の新たな診断法開発に向けた臨床研究への展開が期待されています。
本研究成果は、2023年5月18日(日本時間)に「Cell Death & Disease」に掲載されます。
本研究は、JST「創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR210H)」、AMED「成育疾患克服等総合研究事業(課題番号:JP22gk0110056、JP22gk0110069)」、AMED「革新的先端研究開発支援事業ステップタイプ(課題番号:JP21gm4010010)」、AMED「女性の健康の包括的支援実用化研究事業(課題番号:JP21gk0210021、JP22gk0210028)」、AMED「「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究事業(課題番号:JP22lk0310083)」、科研費「基盤研究B(課題番号:JP19H03144、JP19H03796、JP22H02538、JP22H03222)」、科研費「挑戦的研究(萌芽)(課題番号:JP22K19595、JP22K19596)」、科研費「若手研究(課題番号:JP19K16022、JP21K16763、JP22K16852)」、科研費「特別研究員奨励費(課題番号:JP21J00509)」、持田記念医学薬学振興財団、上原記念生命科学財団、井上科学振興財団、東大病院・ニプロ株式会社共同研究契約の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(842KB)
<論文タイトル>
- “The EZH2-PRC2-H3K27me3 axis governs the endometrial cell cycle and differentiation for blastocyst invasion”
- DOI:10.1038/s41419-023-05832-x
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
廣田 泰(ヒロタ ヤスシ)
東京大学 大学院医学系研究科 産婦人科学講座 准教授
-
<JST事業に関すること>
中神 雄一(ナカガミ ユウイチ)
科学技術振興機構 創発的研究推進部
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-7276 Fax:03-6268-9413
E-mail:souhatsu-inquiryjst.go.jp
-
<報道担当>
東京大学 医学部附属病院 パブリック・リレーションセンター(担当:渡部、小岩井)
Tel:03-5800-9188(直通)
E-mail:pradm.h.u-tokyo.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp