ポイント
- ジャガイモシストセンチュウ類(PCN)は世界中で食糧生産を阻害する重大害虫である。
- PCNの卵はシストと呼ばれる硬い殻に守られており、宿主作物の根から分泌される孵化(ふか)促進物質(Hatching Factor:HF)に応答して孵化する。
- PCNに対する既知HFはソラノエクレピンA(SEA)のみであった。
- 本研究ではPCNに対する新規HFとしてソラノエクレピンB(SEB)を発見した。
- SEBは土壌中の微生物によりSEAへ変換されることを明らかにした。
- トマトからSEB生合成遺伝子を世界で初めて発見し、それらの遺伝子をノックアウトすることによりSEBの生産が完全に阻害され、PCNの孵化率が顕著に低下することを明らかにした。
神戸大学 大学院農学研究科の水谷 正治 准教授、秋山 遼太 研究員、清水 宏祐(博士後期課程修了)らと、農研機構 北海道農業研究センターの串田 篤彦 博士、北海道大学 大学院理学研究院の谷野 圭持 教授らの研究グループは、世界中で農業に甚大な被害を及ぼしているジャガイモシストセンチュウ類の孵化を誘導する新規化合物であるソラノエクレピンBを発見しました。また、宿主作物の1つであるトマトにおいてソラノエクレピンBの生合成を遮断することにより、ジャガイモシストセンチュウの孵化を大幅に低減できることを明らかにしました。これにより、シストセンチュウの新たな防除法の開発への道が開かれ、持続可能な農業生産に大きく貢献できると期待されます。
この研究成果は、2023年3月15日(水)(EST 米国東部標準時)に、国際学術雑誌「Science Advances」に掲載される予定です。
本研究の一部は、JSPS 科研費基盤B(21H02132)(水谷、串田)、生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち先導プロジェクト)」(水谷、串田、谷野)、および、JST/ACT-X「シストセンチュウ孵化促進物質生合成の解明と新奇防除法への応用(JPMJAX21B1)」(秋山)の支援を受けて行った。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Solanoeclepin B, a hatching factor for potato cyst nematode”
- DOI:10.1126/sciadv.adf4166
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神戸大学 大学院農学研究科 生命機能科学専攻 准教授
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秋山 遼太(アキヤマ リョウタ)
神戸大学 大学院農学研究科 生命機能科学専攻 研究員
Tel:078-803-5885
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