プラズマの揺らぎや乱流による熱の流れ(熱輸送)を高精度かつ高速に計算することは、核融合炉の性能予測と制御に関わる物理メカニズムの解明において重要な課題です。
核融合科学研究所の仲田 資季 准教授と総合研究大学院大学 博士課程 大学院生の中山 智成さんらの研究グループは、スーパーコンピューターを用いた多数の大規模数値計算から得られた乱流と熱輸送のデータを元に、数理最適化の手法を応用することで高精度の数理モデルを構築することに成功しました。この新しい数理モデルを駆使することで、核融合プラズマの乱流と熱輸送を、単純化された小規模な数値計算のみによって予測することが可能となり、従来の大規模数値計算に比べておよそ1500倍の高速計算が実現されます。本研究成果は核融合プラズマの乱流研究を加速させるだけでなく、そこで開発された複雑な状態を単純計算から予測する手法は、揺らぎや乱れ、流れを伴うさまざまな複雑流動現象の研究にも貢献することが期待されます。
この研究成果をまとめた論文が2023年3月16日(日本時間)英国ネイチャー・パブリッシング・グループの科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業 さきがけ「複雑な流動・輸送現象の解明・予測・制御に向けた新しい流体科学(研究総括:後藤 晋)」における研究課題「数理融合で拓く乱流場中の自発的秩序構造形成の活性化と輸送制御(研究代表者:仲田 資季、JPMJPR21O7)」および次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2104)、量子科学技術研究開発機構のトカマク炉心プラズマ共同研究、文部科学省の科学研究費補助金事業(20K03907、22K03574、17K07001)、日本学術振興会の「研究拠点形成事業(A.先端拠点形成型)」”PLADyS”による支援を受けました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(315KB)
<論文タイトル>
- “A simplified model to estimate nonlinear turbulent transport by linear dynamics in plasma turbulence”
- DOI:10.1038/s41598-023-29168-w
<お問い合わせ先>
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仲田 資季(ナカタ モトキ)
自然科学研究機構 核融合科学研究所 ヘリカル研究部 核融合理論シミュレーション研究系 准教授
Tel:0572-58-2276
E-mail:nakata.motoki@nifs.ac.jp -
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Tel:0572-58-2016
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