岡山大学,科学技術振興機構(JST)

令和5年3月7日

岡山大学
科学技術振興機構(JST)

キウイフルーツのゲノム解読が「性染色体進化の定説」を覆す

ポイント

「性別」は性染色体によって決定しており、例えば私たちヒトを含む哺乳類ではY染色体を持つものがオスになります。Y染色体は対となるX染色体と全く異なる構造をしており、これは「オスらしさ」を作り出すようY染色体が進化するためであるというのが従来の定説でした。一方、植物も哺乳類と同様にXY型の性別を持つ種が多く、100年前に植物で初めてのY染色体が発見されましたが、その進化過程は長年謎に包まれていました。岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域(農)の赤木 剛士 研究教授は、これまで柿やキウイフルーツを材料として植物の性別の研究に取り組んでおり、世界に先駆けて植物の性を決定する遺伝子群やその進化を解明してきました。この度、赤木 研究教授は、さまざまなキウイフルーツの全ゲノム配列を解読し、進化の過程でキウイフルーツが何度も新しいY染色体を重複して生み出しており、これには従来の定説を覆す新しい進化メカニズムが関与している可能性があることを提唱しました。キウイフルーツのオスは花が多い・花が早く咲くといった「オスらしさ(オスに有利な特徴)」を持っていますが、赤木 研究教授らは、この特徴が従来の説のようにY染色体が作られる過程で生み出されたものではなく、性別決定遺伝子そのものが本来持つ機能であることを明らかにしました。これは、植物における性染色体の進化過程やその役割を世界で初めて明らかにしたものであると同時に、作物の性表現に関わる重要な知見として、食物の安定的生産や新しい育種を可能にする技術に発展していくと期待できます。

本研究成果は、日本時間3月7日(英国時間:3月6日)、英国の科学雑誌「Nature Plants」に掲載されます。本研究は、香川大学 農学部、かずさDNA研究所、ニュージーランド Plant&Food Research研究所、カリフォルニア大学 デービス校、エディンバラ大学との共同研究として行われました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「フィールドにおける植物の生命現象の制御に向けた次世代基盤技術の創出(研究総括:岡田 清孝)」における研究課題「カキ属をモデルとした環境応答性の性表現多様化機構の解明(JPMJPR15Q1)」(研究者:赤木 剛士、研究期間:2015年12月〜2019年3月)、さきがけ「植物分子の機能と制御(研究総括:西谷 和彦)」における研究課題「ゲノム・遺伝子倍化が駆動する植物分子の新機能の探索とデザイン(JPMJPR20D1)」(研究者:赤木 剛士、研究期間:2020年12月〜2024年3月)、学術変革領域(A)「挑戦的両性花原理(22H05172)」(領域代表:赤木 剛士)における「植物の「可塑的な性」を駆動するゲノム動態原理(22H05173)」(研究者:赤木 剛士、研究期間:2022年7月~2027年3月)の支援を受けて実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Recurrent neo-sex chromosome evolution in kiwifruit”
DOI:10.1038/s41477-023-01361-9

<お問い合わせ先>

(英文)“Recurrent neo-sex chromosome evolution in kiwifruit”

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