ポイント
- 通常は南北の区別しかできないと考えられていた磁石で、キラル結晶の左右が区別できることが明らかとなった。
- 左右の区別がある超伝導体(キラル超伝導体)に交流電流を流すと、結晶の左右に応じた電子スピンが誘起されることを発見した。
- 磁石を使ったキラル分子の左右分別(光学分割)に基礎的な理解を与えることに成功した。
- 将来の超伝導スピントロニクスにおけるスピン源としての発展も期待される。
分子や結晶のキラリティ制御は、創薬やディスプレイ開発など多くの分野で重要な課題です。近年、これまで用いられてきた化学的キラリティ分別に加えて、磁石を用いた分子のキラリティ分別が試みられるようになってきました。しかし、その原理は物理法則の対称性から考えて、少し分かりにくく曖昧な点がありました。
分子科学研究所 協奏分子システム研究センターの山本 浩史 教授・広部 大地 助教(現所属:静岡大学)・中島 良太 大学院生(総合研究大学院大学)らの研究チームは、同研究所 メゾスコピック計測研究センターの岡本 裕巳 教授・成島 哲也 助教(現所属:文部科学省)らと共同で、有機キラル超伝導体を用いた電子デバイスの最新技術を応用し、キラル超伝導体中に発生したスピン蓄積の観測に成功しました。曖昧であったキラルな結晶構造とスピン蓄積との関係を研究チームは明らかにし、確かに磁石の表面でキラリティを分別できると実証しました。
本研究成果は、「Nature」誌に2023年1月19日(木)(日本時間)に公開されます。
本研究は、科学研究費補助金(20K20903、22K18695、20H01866、17H03014、20H01863、21H05439、21H04641、16H06505、22H05135、21K18884、19H00891)、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR20L9)、JST戦略的創造研究推進事業ERATO(JPMJER1301)などの支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(779KB)
<論文タイトル>
- “Giant spin polarization and a pair of antiparallel spins in a chiral superconductor”
- DOI:10.1038/s41586-022-05589-x
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
山本 浩史(ヤマモト ヒロシ)
自然科学研究機構 分子科学研究所 協奏分子システム研究センター 教授
Tel:0564-55-7334
E-mail:yhiroshiims.ac.jp
広部 大地(ヒロベ ダイチ)
静岡大学 理学部 助教
Tel:054-238-4750
E-mail:hirobe.daichishizuoka.ac.jp
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<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2066
E-mail:prestojst.go.jp
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<報道担当>
自然科学研究機構 分子科学研究所 研究力強化戦略室
Tel:0564-55-7209
E-mail:pressims.ac.jp
静岡大学 広報・基金課
Tel:054-238-5179
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