ポイント
- サンゴや貝の共生藻(褐虫藻)の細胞表面から光保護機能を持つ色素細菌を発見し、この細菌の存在量を操作することで褐虫藻の強光ストレス耐性を向上することに成功しました。
- 褐虫藻を抗生物質処理した後も、褐虫藻の細胞表面には細菌が生残し、その多くがカロテノイドを合成する色素細菌であることを発見しました。
- 微生物を用いたプロバイオティクスという新しいサンゴ・褐虫藻の保護方法の基盤作りに貢献することが期待されます。
東京大学の髙木 俊幸 助教、井上 広滋 教授、ワシントン大学の元根 啓佑 博士、琉球大学の山城 秀之 教授、大阪公立大学の三浦 夏子 助教らによる研究グループは、サンゴ共生藻である褐虫藻(かっちゅうそう)の細胞表面から光保護機能を持つ色素細菌を発見し、この細菌の存在量を操作することで褐虫藻の強光ストレス耐性を向上することに成功しました。
培養液中やサンゴ組織において、褐虫藻と共在する細菌を抗生物質により除去したところ、カロテノイドを合成する色素細菌が顕著に共生細菌として生残することを発見しました。色素細菌自身は抗生物質耐性能を持たず、褐虫藻の細胞表面に生息することで抗生物質の作用から逃れていることを発見しました。細胞表面に生息する細菌には色素細菌が多いという結果は、自然環境において色素細菌の存在が褐虫藻の生存に有利に働く可能性を示しています。
今回発見した光保護機能を持つ細菌をサンゴや褐虫藻を強光ストレスから守る「プロバイオティクス」として利用することで、将来的にはストレス耐性を持つサンゴ育種のための技術開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2023年1月18日(米国東部時間)に「Microbiology Spectrum」のオンライン版で公開されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) ACT-X「環境とバイオテクノロジー」研究領域における「エコプロバイオティクスによる環境適応型サンゴの創出」(研究代表者:髙木 俊幸、JPMJAX20B9)および日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究「細菌が褐虫藻と共生しROS産生を軽減するメカニズムの全容解明」(研究代表者:髙木 俊幸、21K14766)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(583KB)
<論文タイトル>
- “Mutualistic interactions between dinoflagellates and pigmented bacteria mitigate environmental stress”
- DOI:10.1128/spectrum.02464-22
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
髙木 俊幸(タカギ トシユキ)
東京大学 大気海洋研究所 海洋生命科学部門 助教
Tel:04-7136-6215
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<JST事業に関すること>
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科学技術振興機構 戦略研究推進部 先進融合研究グループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
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<報道担当>
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