京都大学 大学院理学研究科 依光 英樹 教授、黒木 尭 同 特定准教授、高橋 郁也 同 博士後期課程学生の研究グループは、アルキンの三重結合に金属を結合させる新手法を開発し、入手困難であった有用有機金属化合物を簡便に調製することに成功しました。
炭素原子と金属原子の間に結合を持つ有機金属化合物は、医農薬や機能性有機材料を製造する上で極めて重要な中間体であり、現代社会を縁の下で支えています。天然には存在しない有機金属化合物を調製するには、有機ハロゲン化物を還元(電子を注入)する方法が一般的です。しかし、この手法では調製できない有機金属化合物が数多く存在します。そこで、本研究グループは、炭素―炭素三重結合に電子を注入する独自の手法により、入手が容易なアルキンを原料として2本の炭素―金属結合を一挙に構築し、従来法では調製が困難な二重金属化アルケンを容易に調製することに成功しました。さらに、この新規有機金属化合物が斬新かつ有用な化学反応を起こすことも明らかにし、中間体としての有用性を明確にしました。本研究成果により、有用物質の合成効率の飛躍的な向上が見込めるとともに、持続可能な物質生産プロセス構築への大きな波及効果が期待できます。
本成果は、2023年1月3日(火)(日本時間)に国際学術誌「Nature Synthesis」にオンライン掲載されます。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST「[革新的反応]新たな生産プロセス構築のための電子やイオン等の能動的制御による革新的反応技術の創出(JPMJCR19R4)」、JSPS 科学研究費補助金「基盤研究A(JP19H00895)」「特別研究員奨励費(JP20J22814)」、旭硝子財団の支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.46MB)
<論文タイトル>
- “Synthesis of trans-1,2-dimetalloalkenes through reductive anti-dimagnesiation and dialumination of alkynes”
- DOI:10.1038/s44160-022-00189-z
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