ポイント
- ロボットを用いて自動化された進化実験を行うことで、微生物の薬剤耐性進化に関わる表現型変化の大規模データを取得しました。
- 得られたデータを基にして適応度地形を構築し、これまで困難であった微生物進化の予測・制御を可能にする手法を提案しました。
- 本研究の手法を応用することで、病原菌の薬剤耐性の進化を抑制する手法の開発や、工学・農学分野における有用微生物の育種につながると期待されます。
今回、東京大学 大学院理学系研究科の岩澤 諄一郎 大学院生(研究当時)と古澤 力 教授らの研究チームは、微生物の一種である大腸菌の進化実験から得られたデータを用いて、薬剤耐性進化を予測・制御する手法を新しく開発しました。本研究成果は、病原菌の抗生物質耐性進化を抑制する手法開発や、工学・農学分野における有用微生物の育種につながると期待されます。
抗生物質が効かない病原菌である耐性菌の出現が世界的な問題となっており、その対策のためには病原菌の進化を予測できる技術の開発が重要となります。しかし、進化に関わる突然変異の種類が膨大なため、遺伝子型に基づいた進化の予測はこれまで困難でした。本研究では、表現型進化が比較的少数のパターンに拘束されているという解析結果を背景とし、遺伝子型よりも表現型の方が進化の予測に必要なデータ量が少なく済むことに着目しました。そこでロボットを用いた大腸菌の進化実験を行い、薬剤耐性進化に関わる表現型変化と薬剤への適応度変化を大規模に測定しました。そして、得られた表現型のデータを用いて、表現型と適応度との対応付けのモデル(適応度地形)を構築しました。また、得られた適応度地形を用いた進化の制御方法を提案しました。
本研究成果はオンライン科学誌「PLOS Biology」において2022年12月14日付け(日本時間)で公開されます。
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(課題番号:17H06389、19H05626)、JST ERATO 深津共生進化プロジェクト(課題番号:JPMJER1902)、日本学術振興会 特別研究員奨励費(課題番号:JP18J21942)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(649KB)
<論文タイトル>
- “Analysis of the evolution of resistance to multiple antibiotics enables prediction of the Escherichia coli phenotype-based fitness landscape”
- DOI:10.1371/journal.pbio.3001920
<お問い合わせ先>
-
<研究に関すること>
古澤 力(フルサワ チカラ)
東京大学 大学院理学系研究科 生物普遍性研究機構 教授
Tel:03-5841-4512
E-mail:furusawaubi.s.u-tokyo.ac.jp
-
<JST事業に関すること>
今林 文枝(イマバヤシ フミエ)
科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部 ICT/ライフイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3528 Fax:03-3222-2068
E-mail:eratowwwjst.go.jp
-
<報道担当>
東京大学 大学院理学系研究科・理学部 広報室
Tel:03-5841-0654
E-mail:media.sgs.mail.u-tokyo.ac.jp
理化学研究所 広報室 報道担当
Tel:050-3495-0247
E-mail:ex-pressml.riken.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp