早稲田大学,クイーンズランド大学,科学技術振興機構(JST)

令和4年9月6日

早稲田大学
クイーンズランド大学
科学技術振興機構(JST)

有機金属構造体から次世代多孔性炭素材料を合成する方法論を確立

~蓄電池や触媒のエネルギー貯蔵・変換への応用に期待~

ポイント

早稲田大学 理工学術院の山内 悠輔 客員上級研究員(豪州 クイーンズランド大学 教授/物質・材料研究機構 グループリーダー)と菅原 義之 教授、および JST-ERATO 山内物質空間テクトニクスプロジェクト(早稲田大学、豪州 クイーンズランド大学、物質・材料研究機構)のメンバーらは、有機金属構造体(通称、MOF)粒子を出発物質として用い、これを直接炭化することにより、均一な多孔性炭素粒子を高い生産性で合成する方法論(プロトコル)を確立しました。

MOFは、炭化中にMOFの有機ユニットの炭素原子が粒子内部で再配列し、元々存在する細孔骨格の影響により、高い表面積を持つ多孔性炭素材料を合成できます。このプロトコルでは、炭化前の出発物質であるMOF粒子の内部をエッチングしたり、MOF粒子表面を別の組成のMOFで被覆したコアーシェル型MOF粒子をあらかじめ作製したりすることで、炭素中空粒子や炭化度が同一粒子内で異なる多孔性粒子などを自由に作り出すことができます。さらには、MOF由来の炭素層の細孔と比較して、一回り大きな細孔径(5~10ナノメートル程度)を持つ炭素層を粒子表面に被覆させることもできるようになり、同一粒子内で大きさが異なる細孔を持つ階層的な細孔空間を設計することもできます。

MOFは、自己組織化に基づく金属イオンと有機分子の間の配位結合によって形成される結晶性多孔質材料で、大きな比表面積、優れた熱的および化学的安定性を有しており、広い用途への応用に期待が寄せられています。しかし、有機部位が骨格中に存在するため、電気伝導率が低く、エネルギー貯蔵・変換、バイオセンサー、キャパシターなどの電気化学的な応用展開には不向きでした。本研究成果は、MOFの直接炭化法に関する全合成プロトコルを公開しており、高度な形態や細孔構造を制御することが可能となったことで、今後MOFの応用範囲を大幅に広げることが期待されます。

本成果は、英国科学誌「Nature Protocols」の電子版に2022年9月5日(月)(BST英国夏時間)に掲載されます。

本研究は、以下の支援を受けて行われました。

科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 総括実施型(ERATO)
JST-ERATO 物質空間テクトニクス
山内 悠輔(早稲田大学、豪州 クイーンズランド大学、物質・材料研究機構)
菅原 義之(早稲田大学)、朝日 透(早稲田大学)

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“MOF-derived nanoporous carbons with exotic nanoarchitectures”
DOI:10.1038/s41596-022-00718-2

<お問い合わせ先>

(英文)“MOF-derived nanoporous carbons with exotic nanoarchitectures”

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