慶應義塾大学,東京医科歯科大学,大阪大学,東京大学 医科学研究所,北里大学,京都大学,科学技術振興機構(JST)

令和4年8月8日

慶應義塾大学
東京医科歯科大学
大阪大学
東京大学 医科学研究所
北里大学
京都大学
科学技術振興機構(JST)

「コロナ制圧タスクフォース」
COVID-19疾患感受性遺伝子DOCK2の重症化機序を解明

~アジア最大のバイオレポジトリーでCOVID-19の治療標的を発見~

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)は、流行の始まりから2年経過した現在も社会の脅威であり続けています。これに立ち向かうため、2020年5月に感染症学、ウイルス学、分子遺伝学、ゲノム医学、計算科学、遺伝統計学を含む、異分野の専門家が集まり、共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」を立ち上げました。コロナ対応の最前線に立つ医療従事者からも大きな賛同を得て全国100以上の病院が参加し、2022年7月末時点で6,000人以上の患者さんのご協力で、アジア最大の生体試料数を持つ研究グループへと発展しました。

コロナ制圧タスクフォースは、このCOVID-19患者検体のゲノム解析を進め、アジアで初めてCOVID-19患者さんと健常者との遺伝子型を網羅的に比較する大規模ゲノムワイド関連解析を実施しました。その結果、免疫機能での重要な役割が知られる「Dedicator of cytokinesis 2(DOCK2)」と呼ばれる遺伝子の領域の遺伝子多型(バリアント)が、65歳以下の非高齢者における重症化リスクと関連性を示すことを発見しました。また、RNA-seq解析、single cell RNA-seq解析一細胞解析、病理解析、細胞実験、動物実験による詳細な解析から、DOCK2がCOVID-19の重症化のマーカーとなるだけでなく、COVID-19の治療標的となることを見いだしました。これらの成果は今後の新しい治療戦略につながると考えられます。

本研究成果は、2022年8月8日(英国時間)に国際科学誌「Nature」オンライン版に掲載されます。コロナ制圧タスクフォースは、新型コロナウイルスと闘う患者さんや、医療従事者と共に、新型コロナウイルスの克服、そしてネクストパンデミックに備える社会の公器として、引き続き活動を続けていきます。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) 創薬支援推進事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」、「新型コロナウイルス感染症の遺伝学的知見に基づいた分子ニードルCOVID-19粘膜免疫ワクチンの開発」(研究代表者:金井 隆典 慶應義塾大学 医学部 内科学(消化器) 教授)、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「新型コロナウイルス感染症の重症化阻止を目指した医薬品・次世代型ワクチン開発に必要な遺伝学・免疫学・代謝学的基盤研究の推進」(研究代表者:福永 興壱 慶應義塾大学 医学部 内科学(呼吸器) 教授)、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「新型コロナ変異ウイルスに対する遺伝学的、免疫学的、代謝学的病態解明および治療戦略の策定」(研究代表者:福永 興壱 慶應義塾大学 医学部 内科学(呼吸器) 教授)、新興・再興感染症研究基盤創生事業(多分野融合研究領域)、「新型コロナウイルス感染症後遺症の病態生理の多分野融合による解明」(研究開発代表者:石井 誠 慶應義塾大学 医学部 内科学(呼吸器) 准教授(研究当時、現在:名古屋大学 大学院医学系研究科 教授))、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「先端ゲノム解析と人工知能によるコロナ制圧研究(JPMJCR20H2)」(研究代表者:井元 清哉 東京大学 医科学研究所附属 ヒトゲノム解析センター 教授)、さきがけ「パンデミックに対してレジリエントな研究体制構築のための基盤研究(JPMJPR21R7)」(研究代表者:南宮 湖 慶應義塾大学 医学部 感染症学教室 専任講師)、大阪大学 免疫学フロンティア研究センター(IFReC)、大阪大学 感染症総合教育研究拠点(CiDER)、日本財団・大阪大学感染症対策プロジェクトにおけるチーム阪大研究プロジェクト、武田科学振興財団、三菱財団の支援を受けました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“DOCK2 is involved in the host genetics and biology of severe COVID-19.”
DOI:10.1038/s41586-022-05163-5

<お問い合わせ先>

(英文)“DOCK2 is involved in the host genetics and biology of severe COVID-19”

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