ポイント
- 網羅的な単一遺伝子ノックアウトスクリーニングから単純ヘルペスウイルス1型の感染に関与する宿主因子を同定した。
- 本研究で同定された宿主因子には、細胞表面糖鎖であるヘパラン硫酸の生合成に関わる遺伝子が多く含まれていた。
- 単純ヘルペスウイルス1型の感染に関与する宿主因子の1つとしてPAPSS1を本研究で同定した。
- 糖鎖の硫酸化修飾を担う遺伝子PAPSS1の活性は、その側系遺伝子PAPSS2でも補完されることが示された。
- PAPSS1遺伝子の機能を欠損(ノックアウト)すると、細胞表面のヘパラン硫酸量が減り、単純ヘルペスウイルス1型だけでなく、B型肝炎ウイルスやヒト風邪コロナウイルスの細胞への吸着も低下し、ヘパラン硫酸は多くのウイルスで細胞への吸着に利用されていることが明らかになった。
名古屋大学 大学院医学系研究科 ウイルス学の佐藤 好隆 准教授、鈴木 健史 客員研究員 (元・大学院生)、木村 宏 教授らの研究グループは、名古屋市立大学 大学院医学研究科 ウイルス学の奥野 友介 教授、神戸薬科大学 生化学研究室の北川 裕之 教授、藤田医科大学 医学部 ウイルス・寄生虫学の村田 貴之 教授、国立感染症研究所の脇田 隆字 所長、渡士 幸一 治療薬開発総括研究官との共同研究で、口唇ヘルペスや脳炎を起こす単純ヘルペスウイルス1型の感染に関与する宿主因子の網羅的な探索により、ヘパラン硫酸の生合成に関与する一連の遺伝子を同定し、PAPSS1遺伝子と単純ヘルペスウイルス1型感染の関係を明らかにしました。
細胞表面の糖鎖であるヘパラン硫酸が、ウイルス粒子と標的細胞との吸着を補助し、ウイルス粒子の細胞への侵入に寄与していることが分かり、これは単純ヘルペスウイルス1型だけでなく、B型肝炎ウイルスやヒト風邪コロナウイルスにも共通していました。ウイルス感染の理解が深まり、感染をコントロールする技術開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2022年7月19日付(現地時間)国際科学雑誌「Communications Biology」オンライン版に掲載されます。
本研究は、文部科学省 科学研究費助成事業(JP16H06231、JP19H04829、JP21K15448、JP20K06551、JP20H03386、JP20H03493)、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(JPMJPR19H5)、日本医療研究開発機構 新興・再興感染症研究基盤創生事業(多分野融合研究領域)(JP21wm035042、JP20wm0325012)、日本医療研究開発機構 地球規模保健課題解決推進のための研究事業(JP19jk0210023)などの支援のもとで行われたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(522KB)
<論文タイトル>
- “Genome-wide CRISPR screen for HSV-1 host factors reveals PAPSS1 contributes to heparan sulfate synthesis”
- DOI:10.1038/s42003-022-03581-9
<お問い合わせ先>
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名古屋大学 大学院医学系研究科 ウイルス学 准教授
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北川 裕之(キタガワ ヒロシ)
神戸薬科大学 生化学研究室 教授
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